草薙本に公共性ない

▼「草薙本に公共性ない」講談社元編集長が証言…調書漏示公判
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090127-OYT1T00636.htm
奈良県田原本町の放火殺人事件で少年(18)の供述調書などを漏らしたとして、刑法の秘密漏示罪に問われた精神科医崎浜盛三被告(51)の公判が27日、奈良地裁(石川恭司裁判長)であった。
 調書を引用したフリージャーナリスト草薙厚子さん(44)の著書が講談社から出版された当時、社内で唯一、出版に反対したとされる同社の週刊誌「週刊現代」の加藤晴之・元編集長(53)が弁護側証人として出廷、「本に公共性、公益性がないのが一番の問題だと思った。出版するべきではなかった」と述べた。
 弁護側から、出版に反対した理由を質問されると、加藤元編集長は「知る権利とプライバシーのバランスを欠いていたため」と話し、「結果として公権力の介入を招いた」とした。
 さらに、「草薙さんは情報源を明かしましたが、あなたはどうしますか」と問われると、「しません。情報源は必ず守らなければいけない」と答えた。
 石川裁判長が「本になる前に、あなたが担当していれば何をアドバイスしていたか」と質問。加藤元編集長は「どこかで編集者がブレーキを踏む必要があった」と述べた。
 証人尋問の終了後、加藤元編集長は「崎浜被告には無罪を勝ち取ってほしい。表現の自由を妨げるような判例を残すべきではない」と話した。元編集長は現在、同社学芸局次長。
 講談社が設置した第三者調査委員会の調査報告書によると、週刊現代は、本の出版に先立つ2006年10月、調書を基に草薙さんが書いた事件の記事を、崎浜被告にチェックしてもらった上で掲載。一方、本は07年5月の出版前に、崎浜被告に意見を求めないまま、編集作業を進めた、としている。加藤元編集長は、出版1週間前に宣伝記事の掲載を依頼されたが拒否、出版に反対したとされる。》

▼調書漏えい公判:前編集長「公共性図られず」出版に反対
http://mainichi.jp/select/today/news/20090127k0000e040038000c.html
奈良県田原本町の母子3人放火殺人事件を巡る供述調書漏えい事件で、秘密漏示罪に問われた精神科医、崎浜盛三被告(51)の第6回公判が27日、奈良地裁(石川恭司裁判長)であった。講談社学芸局次長の加藤晴之さん(53)=前「週刊現代」編集長=の証人尋問があり、調書の直接引用について「公共性が図られていないという認識だった。(本を)出すべきではなかった」などと語った。出版元の幹部が自社の刊行物を批判する異例の展開で、当時の講談社の甘い編集、チェック体制が改めて浮き彫りになった。
 講談社は07年5月、殺人などの非行内容で中等少年院送致となった長男(18)の供述調書を引用した単行本「僕はパパを殺すことに決めた」を出版。昨年4月に出た講談社の第三者調査委員会報告書によると、加藤さんは社内でただ一人公然と出版に異を唱えた。この日は崎浜被告が出版に関与していないことを立証するため、弁護側が証人申請した。
 出版について加藤さんは「結果として崎浜さんに迷惑を掛けた」と述べ、公権力の介入を招く恐れを感じたかについては「抱きました。どうなるか分からなかったが、介入を招く危惧(きぐ)はあった」と答えた。
 単行本出版当時、加藤さんは「週刊現代」の編集長。講談社の第三者調査委員会報告書によると、加藤さんは単行本の編集者から「週刊現代で宣伝風記事をやってほしい」と頼まれてゲラを読み、「この本は出すべきじゃない」と担当部長に怒ったという。
 この日の公判でも、はっきりとした口調で調書の直接引用に反対したことを説明。崎浜被告の起訴については涙を浮かべ、言葉を詰まらせながら「すみません。すみません。講談社の人間としてこのような事態を招き、公権力の介入を許し、崎浜さんに大変迷惑をかけて申し訳ありません。一社員として二度とこういうことがないよう、反省しています」と謝罪した。
 前回公判で著者の草薙厚子さん(44)は情報源を崎浜被告と明かしたが、加藤さんは自身のスタンスを聞かれ「情報源の秘匿は命に代えてでも守るべきもの」と断言。また、石川恭司裁判長から自分が出版にかかわっていたらどう対応したかを尋ねられると「現物を見て違和感を感じた。編集者がブレーキを掛ける責任があった。自分ならこのような形の本にはならなかったのではないか」と述べた。
 講談社が08年4月に出した見解によると、刊行前に法務部のチェックを受けるのが社内の通例。ところがこの時は、出版部が内容変更を避けたい気持ちに引きずられ、刊行直前までチェックを受けなかった。捜査の可能性を指摘した顧問弁護士とも協議しないままで、同社は「意欲や自由な発想を重んじる社内の風土が、チェック機能という点においては大きな問題をはらむものだった」としている。
 加藤さんは証人尋問後、報道陣に「崎浜被告には無罪を勝ち取っていただきたい」と話した》

▼鑑定医「だまされた」 奈良調書漏出、法廷で著者ら批判
http://www.asahi.com/national/update/0128/OSK200901270107.html
《27日、奈良地裁で開かれた奈良県田原本町の医師宅放火殺人事件をめぐる供述調書漏出事件の公判で、同日午後、秘密漏示の罪に問われた鑑定医の崎浜盛三(もりみつ)被告(51)に対する被告人質問が行われた。崎浜医師は「結果的にだまされた思いはある」と述べ、調書の引用本を出版した著者の草薙厚子氏や講談社を批判した。草薙氏に調書を見せたのは「信念に基づいたこと」と強調する一方、「ああいう本が出てしまったのは後悔といえば後悔」とも語った。
 調書を見せた理由について、崎浜医師は、放火殺人事件で中等少年院送致とされた少年(18)の精神鑑定を担当して「広汎性発達障害」と診断したことを踏まえ、「『殺人者』ではないと世間に知って欲しかった。何らかの法に触れるんだろうと思ったが、良心に従った行動なら違法にならないと理解していた」と述べた。
 刑法の秘密漏示罪は、医師や薬剤師、弁護士らが「正当な理由」なく秘密を漏らす行為を罰するとしている。崎浜医師側は、調書漏出には少年の将来を守るという「正当な理由」があり、違法性はないと主張している。
 崎浜医師は被告人質問で、自らが務めた精神鑑定の鑑定人は秘密漏示罪の条文にある「医師」とは法的に立場が異なると主張。両者の違いについて「医業とは患者を治療すること。鑑定では治療したくてもできない」と説明し、同罪にはあたらないと強調した。
 また、調書をめぐって草薙氏との間に「コピーしない」「形を変えて出す」「(原稿を)事前にチェックさせる」との約束があったが守られなかったと述べ、「結果的にだまされた思いはある。本も、私の訴えたいこととは逆の内容だった」と批判した。
 午前の公判に証人として出廷した、講談社内で出版に唯一反対したとされる加藤晴之・前「週刊現代」編集長(53)が「(取材源は)命に代えても守るべきもの」と述べたことについては「講談社にもしっかりしたお考えの人がいるとほっとした」と述べた。
 裁判官は「一切、後悔している点はないのか」と質問した。崎浜医師はしばらく考えた後、「こういう結果になったこと、ああいう(調書を引用した)本が出てしまったことは、後悔といえば後悔する点です」と答えた。
 証拠調べはこの日で終了。2月24日の次回公判では検察側による論告求刑と、弁護側による最終弁論が行われる。》

▼奈良・田原本町の放火殺人:調書漏えい 取材源明示、草薙さん公判証言に波紋
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090126ddm012040060000c.html?link_id=RSH02
奈良県の母子3人放火殺人事件を取り上げた「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)の著者、草薙厚子さんが、放火したとされる長男(18)を精神鑑定し、その後秘密漏示罪に問われた崎浜盛三被告(51)の今月14日の公判で証言。取材源が崎浜被告だったと初めて明かし、波紋を広げている。証言は重要な記者倫理である取材源の秘匿に反した行為なのか。
 ●「被告の利益考えて」
 「これまで情報源を秘匿してきました。直前まで悩みましたが、被告人の利益を考えて情報源を明らかにします。崎浜先生です。崎浜先生、申し訳ありません」。今月14日の奈良地裁。検察側証人として法廷に立った草薙さんは、検察側から問われた長男らの供述調書の入手先についてそう証言すると、崎浜被告に向かって頭を下げた。
 草薙さんは、07年9月、東京の自宅を捜索された。崎浜被告自身が草薙さんに提供したことをメディアの取材などで認めた後も「取材源は明かせない」としてきたが、その姿勢を転じた。
 なぜ、今になってなのか。草薙さんは「(これまでは)ジャーナリストとして情報源秘匿は当然と考えていたのと、(情報提供を認めた)崎浜先生の真意が分からなかったため」と説明した。
 崎浜被告が問われた刑法134条の秘密漏示罪は、医師らが、業務上知り得た秘密を正当な理由がないのに漏らすことを禁止している。逆に言えば正当な理由があれば処罰されないわけで、崎浜被告側は、長男に母親らに対する殺意がなかったことを取材を通じて社会に広く伝えたいという「正当な理由がある」と主張している。
 草薙さんは法廷で「資料を見せてくださったことの正当性を話したいと思い、明らかにしました」と述べた。崎浜被告の弁護人の高野嘉雄弁護士が「情報提供の正当性を主張するには、名前を出さなくてもAさん、Bさんという表現でいいのではないか」と質問したのに対し、草薙さんは「それでは説得力がない。名前を出した方がいい」と答えた。ただ、それ以上踏み込んで理由を示さなかった。
 しかし、閉廷後の会見で高野弁護士は、被告の有利にはならない、との見方を示した。一方、奈良地検の野島光博次席検事(現大阪高検総務部長)は毎日新聞の取材に対して「(草薙さんが情報源を明かしたことで)双方の供述が一致したという点で前進した」とコメントする。
 崎浜被告は「私はもとから『私が見せた』と言っている。何で今更言うのかな、という感じ」と複雑な表情を見せた。》

▼【調書漏洩事件】公判詳報・週刊現代元編集長と被告人
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090127/trl0901271915012-n1.htm
《医師宅放火殺人の調書漏洩事件で、奈良地裁で27日開かれた第6回公判の主なやりとりは次の通り。》