終わりの始まり――2009年02月07日

▼郵政見直し:自民幹部「首相あまりに軽率」 容認派も批判
http://mainichi.jp/select/today/news/20090207k0000m010083000c.html
麻生太郎首相が日本郵政グループの経営形態再編に言及したことに対し、自民党内では6日、民営化推進派だけでなく見直し容認派からも批判が相次いだ。党のプロジェクトチーム(PT)は月内に見直しの結論をまとめるが、現在の4分社化体制を変える郵政民営化法改正に踏み込めば、対立の激化は必至。定額給付金道路特定財源、消費税増税に続く新たな火種を生みかねず、「首相はあまりに軽率だ」(幹部)との声が広がっている。
 小泉構造改革を支持するグループは6日、首相発言に一斉に反発した。武部勤党改革実行本部長は党役員連絡会で「今さら言われても困る。寝た子を起こすようなことをなぜするのか」と批判。山本一太参院議員は記者会見で「民営化方針を全面的に見直すなら、(自民党が大勝した)この前の衆院選はインチキだったと言われかねない」と指摘した。
 首相にとって、さらに深刻なのは、見直し容認派からも評価されていないことだ。
 PTは現在、党内の民営化推進派にも配慮し、4分社化体制を維持したうえで事業を拡大する方向で意見集約を目指している。
 党政調幹部は「本当は(郵便事業会社と郵便局会社を統合する)3分社化の方がいいが、今そんなことを言えば、郵政選挙の恩恵を受けた都市部の議員が黙っていない」と漏らす。首相の発言は、こうした合意へ向けた努力に水を差しかねないというわけだ。
 党執行部は「首相は質問者の挑発に乗ってポンと言ってしまったんだろう」などと火消しに努めている。大島理森国対委員長は6日、国会内で河村建夫官房長官に「予算委員会で野党に付け入るすきを与えないでほしい」と苦言を呈した。
 「一部に誤解。少なくとも国営化に戻すと言ったことは一回もない。分社化は国民の利便性、経営の効率性、この二つを考える」。首相は6日夜、記者団に、微妙に発言を修正しつつも正当性を強調した。》

※後から振り返った時、これが麻生政権の「終わりの始まり」だったということになるのかもしれませんね……と2009年2月13日に記しています(笑)。

▼薬のネット販売禁止へ 「どう対応」業者困惑
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20090207ddm003040120000c.html
厚生労働省とインターネット業界などが対立していた一般用医薬品(市販薬)のネット販売規制の問題に6日、一応の決着が付いた。薬事法施行規則を改正する省令で、かぜ薬などのネット販売禁止が明記されたが、舛添要一厚労相は新たな検討会を設けて議論を続けることを表明し、規制見直しの余地も残った。
 「続けていいのか、いけないのか」。今回の厚労省の対応に、ネット販売を始めて10年以上になる東京都内の薬局店主は戸惑いを隠さない。省令が出た後、改めて検討会が開かれるのは異例だ。
 6月の改正薬事法施行まで4カ月を切っても議論がこじれているのは、厚労省と業界の法解釈に根本的な食い違いがあるためだ。
 薬事法には、ネットを含む通信販売についての規定がない。厚労省は「対面販売が原則」との立場で、88年にリスクの低い薬以外の販売は業者と協議するよう、都道府県に通知した。しかし都道府県は規制に乗り出さず、業界には「合法」の認識が広がった。
 06年の薬事法改正後もその認識は変わらず、厚労省が、08年9月に省令案を公表すると「法律を超えた規制だ」と反発が起こった。
 楽天三木谷浩史社長は6日、大阪市内での会見で「国民不在で、利便性が著しく損なわれる」と厚労省を非難した。だが、検討会の委員は、19人中14人が、省令のベースとなった報告書をまとめた会議のメンバー。6月までに方針が転換される可能性は低い。火種が残ったまま規制が始まると、ルール無視が横行する恐れもある。
 市販薬で最も副作用のリスクが高い1類医薬品は、改正薬事法で薬剤師による文書説明が義務付けられた。ネット薬局で作る「日本オンラインドラッグ協会」も販売指針で、商品送付の前に文書を届けると定める。
 しかし1類の代表的な胃腸薬「ガスター10」を検索すると、ワンクリックで買える薬局が多数見つかる。安売りをアピールしたり「5000円以上で送料無料」と、一括購入の割安感を強調する店もある。自社サイトで販売していた関西の業者は「店で売るのと変わらない」と意に介さない。
 共立薬科大(現・慶応大薬学部)の福島紀子教授らが05年に行った調査では、ホームページを持つ薬局約3500店のうち約280店がネット販売を行い、24%が1類を扱っていた。店舗がない架空の「薬局」や、1回に何箱でも買えるケースもあったという。福島教授は「消費者が安心して買える現状でないのは確か。分類による禁止だけでなく、安全な販売に向けての議論が必要だ」と訴える。
 市販薬は危険度の高い順に1〜3類に分類され、今回の規制で製薬会社が顧客の注文を受けて1、2類医薬品を直接郵送することも禁じられる。「伝統薬」「家伝薬」などと呼ばれる漢方薬の製造業者は、古くからこうした販売をしていたが、施行規則改正の議論では蚊帳の外に置かれた。大打撃を受ける業者は「ネット規制のとばっちりを食った」と不満を募らせている。
 東京・浅草に戦前から店舗を構える「八ツ目製薬」。ヤツメウナギの有効成分を抽出した主力商品の「キモの油」は、年間約1万人が購入し、半数近くが電話注文による直販だ。社員の薬剤師が応対し、購入者の症状、アレルギーの有無、服用中の薬などを記録して保存する。「自社商品のことは、どこよりも詳しくアドバイスできる。コンビニでの対面販売より安全性が劣ることはあり得ない」と加次井商太郎社長は力説する。
 厚労省は04年以降、医薬品販売のあり方について、二つの専門家会議で計31回の議論を重ねたが、伝統薬の業者が意見を述べる機会はなかった。「08年9月の省令案は、寝耳に水だった」と加次井社長。10月に全国35社が連絡協議会を作り、ようやく反対の声を上げ始めた。ネット規制とは別の問題として、メーカーの直販は認めてほしい、というのが業界のスタンスだ。
 厚労省医薬食品局は「伝統薬への影響を特に検討はしなかった」と認めつつ、今後も最寄りの薬局に商品を届けたり、配置販売(置き薬)業者と契約することで販売継続は可能、との立場を取る。
 だが、コストの増大など、販売方法の変更は簡単ではない。170年の歴史を持つ熊本市のメーカー「吉田松花堂」の吉田順碩(じゅんせき)社長は「伝統薬は貴重な文化遺産。こんな形で終わらせたくない」と、業界の代表も加わる今後の検討会の議論に期待する。》