キヤノン口利き疑惑――2009年02月10日

キヤノン工場建設で口利き、コンサル社長ら脱税容疑で逮捕
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090209-OYT1T00762.htm
《大手精密機器メーカー「キヤノン」が大分市に開設した工場などを巡り、同市のコンサルタント会社「大光」などグループ3社が2006年までの3年間に、工事を受注した大手ゼネコン「鹿島」などから得た仲介手数料や裏金などを含む計三十数億円の所得を隠していた疑いが強まり、東京地検特捜部は9日、一部の脱税工作に関与したコンサルタント会社社長・難波英雄容疑者(61)(兵庫県宝塚市)ら5人を法人税法違反(脱税)容疑で逮捕した。
 特捜部では、大光の大賀規久社長(65)についても容疑が固まり次第、逮捕する。
 3社は、大光とコンサルタント会社「ライトブラック」(大分市)、内装工事会社「匠(たくみ)」(東京都千代田区)で、いずれも大賀社長が代表取締役を務めている。発表などによると、難波容疑者らは大賀社長と共謀、所得隠しの疑いがある三十数億円のうち、ライトブラックの06年5月期までの2年間の所得約9億7600万円を隠し、法人税約2億9200万円を脱税した疑い。
 所得隠しには、難波容疑者の経営する「浪速コンサルタント」(大阪市)のグループ企業が架空発注先などとして使われていた。ほかに逮捕されたのは難波容疑者の関係企業の役員などで、特捜部は大賀社長の脱税工作に協力した関係者の身柄確保を先行させた。
 大光などが得た手数料は05年〜07年、キヤノンが1200億円以上を投じて、大分市に新設した子会社2社のデジタルカメラ生産とプリンター関連装置製造工場の建設工事などに絡むもの。川崎市のプリンター関連の研究開発施設を含め、大半を鹿島が受注した。
 関係者によると、大光などは、鹿島などが受注できるよう口利きした謝礼として、コンサルタント料名目で約12億円を受け取ったが、架空工事を発注する手口で所得を圧縮。さらに、鹿島などからの工事の架空発注で得た十数億円、鹿島が作った裏金約5億円など計三十数億円の所得の大半を隠した疑いが持たれている。
 鹿島は、大賀社長側に提供したこの裏金について、税務調査に使途を明らかにしなかったため、東京国税局から使途秘匿金と認定され、追徴課税されている。キヤノン関係者らによると、大賀社長は、日本経団連会長も務めるキヤノン御手洗冨士夫会長(73)と同郷だったことなどから、同社に太いパイプを持っていた。大賀社長は周辺関係者に「架空工事を発注したこともなく、裏金を受け取ったこともない」と容疑を否定している。》

キヤノン工場建設で口利きの社長、見返り30億円超
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090210-OYS1T00281.htm
キヤノンの工場新設工事受注などに絡む脱税疑惑で、法人税約10億円を脱税した疑いが浮上したコンサルタント会社「大光」(大分市)の大賀規久社長(65)。グループ3社で受け取っていた「口利きの見返り」などは3年間で30億円を超えていた。表の手数料、協力会社からのキックバック、そして裏金手渡し。鹿島などは大賀社長の言いなりとなり、リベートの要求に応じていた。
 関係者によると、大賀社長は、キヤノンの工事で口利きの依頼を受けた業者が受注に成功すると、受注額の数%分の「コンサルタント料」の支払いを求めたという。
 大賀社長が影響力を発揮したのは「キヤノン矢向事業所」(川崎市)の電気設備工事や、「大分キヤノン大分事業所」(大分市)、隣接する「大分キヤノンマテリアル」のプリンターカートリッジ工場(同)の土地造成・建設工事など。それぞれ2003年〜06年にキヤノン大分県土地開発公社が発注した。
 これらの工事を請け負った鹿島や「九電工」(福岡市)は、大賀社長が経営する「大光」などとの間でコンサルタント契約を結び、計約12億円のコンサルタント料を提供していた。
 大賀社長は、こうした正規ルートで受け取った手数料とは別に、鹿島から二つの裏ルートでも資金を受け取っていたという。
 裏ルートの一つは、鹿島や九電工が、大賀社長が指定した福岡県久留米市の造園会社などに下請け発注し、工事代金などを支払わせる手法だった。実際には工事などを行わない架空の下請け契約で、代金の大半は最終的に大光などに入っていた。関係者によると、鹿島九州支店などの担当者は東京地検特捜部の事情聴取に、「(大賀社長から)指定された業者を下請けに入れ、工事代金を振り込んでいた」と認めており、このルートでも10億円を超える資金が大賀社長側に流れていたとみられる。》

▼鹿島が裏金提供メモ作成、頭文字「O」=大賀社長か
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090210-OYT1T00592.htm
キヤノン大分市に展開する工場の新設工事などを巡り、同市のコンサルタント会社「大光」など3社が、工事を受注した大手ゼネコン鹿島から提供された裏金など三十数億円の所得を隠していたとされる事件で、鹿島が裏金の提供先や金額を記したメモを作成していたことが複数の関係者の話でわかった。
 メモに記載された裏金の総額は数億円に上り、大光の大賀規久社長(65)を示すアルファベットの「O」が記載されていたという。東京地検特捜部は10日、大賀社長に出頭を要請、容疑が固まり次第逮捕する。
 特捜部は9日、大光の関係会社「ライトブラック」が2006年5月期までの2年間で、法人税約2億9200万円を脱税したとして、大賀社長の脱税工作に協力したコンサルタント会社社長・難波英雄容疑者(61)ら5人を法人税法違反(脱税)容疑で逮捕している。
 関係者によると、メモが見つかったのは裏金作りの舞台となり、大光に対する東京国税局の強制調査(査察)の際、関係先として調査が入った鹿島九州支店(福岡市)。メモには「O」など複数のアルファベットとともに、提供された裏金の金額が記載されており、支店側は国税局に対し、「Oは大賀社長のことだ」と認めたという。記載された裏金の総額は数億円に上り、特捜部では、鹿島が取引先への架空発注などを通じてこうした裏金を捻出(ねんしゅつ)し、大部分は大賀社長側に提供されたとみている。
 関係者によると、裏金の一部は、同国税局が鹿島の大分営業所(大分市)で押収。紙袋に入った状態で、数千万円あったという。
 大賀社長はキヤノン御手洗冨士夫会長と同郷だったことなどから同社に太いパイプを持っており、事業の受注を望む複数の企業からキヤノンへの口利き料を受け取っていたとされる。同支店は05〜07年にキヤノンが新設した大分市内の2工場の造成・建設工事の大半を受注しており、裏金はこれらの受注の謝礼として用意された疑いが強い。
 鹿島元幹部は読売新聞の取材に対し、「裏金の提供は基本的にすべて大賀社長の指示に基づいて行った。大賀社長はキヤノン代理人のような人物だと思っていたので、断れなかった」と話している。一方、大賀社長は周辺に「鹿島が別人に提供した裏金を、自分にかぶせようとしているのではないか」と話しており、裏金の受領や脱税疑惑を否定しているという。》

▼大賀容疑者、御手洗会長の威光誇示 ゼネコンも恐れる
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090211-OYS1T00268.htm
《「キヤノンの工事は大賀社長を通すのが決まり事になっていた。求められれば、裏金でも支払わざるを得なかった」。キヤノンの工場新設工事を巡る法人税法違反事件で逮捕されたコンサルタント会社「大光」(大分市)社長・大賀規久容疑者(65)側に30億円以上のリベートを提供していた鹿島の幹部はこう証言した。
 下請け業者に過ぎない大賀容疑者が大手ゼネコンを恐れさせるほどになった力の源は、財界トップに上り詰めた御手洗冨士夫キヤノン会長(73)の威光だった。
 「私は社員の結婚式には一切、出ないことにしていますが、新郎のおやじの友人として出席しました」
 大賀容疑者の知人によると、2003年5月に東京都心のホテルで開かれた結婚披露宴で、御手洗会長はこうあいさつした。当時はキヤノン社長に就任して9年目。新郎はキヤノンに勤めている大賀容疑者の長男だった。
 大賀容疑者は、御手洗会長との関係を「200年の仲」と称していた。大賀容疑者の親族らによると、両家はともに大分県佐伯市で江戸時代から続く旧家で、御手洗家は庄屋を務めたような家柄だという。
 ◆影のように
 御手洗会長の叔父でキヤノン創業者の毅・元会長(故人)と大賀容疑者の父親は親友で、御手洗会長は大賀容疑者の実兄と佐伯鶴城高の同級生。実兄は1961年、キヤノンの前身のキヤノンカメラに入社し、御手洗会長も同期だった。
 実兄は実家の工務店「日建」を継ぐため77年12月に退社するが、「退職後もアポなしで御手洗会長に会いに来ていた」(キヤノン元幹部)という。日建はキヤノン新宿本社の内装工事などを受注し、御手洗会長も91年に横浜市内の自宅を同社から購入した。
 初めは日建の社員だった大賀容疑者は、御手洗会長がゴルフをする時には予約や送迎を引き受け、地元・大分に帰ると移動用の高級車を用意。常に影のように付き添う大賀容疑者は、いつしか「会長の私設秘書」と見られるようになった。》

キヤノン工場建設巡る脱税、コンサル社長ら7人逮捕
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090210-OYT1T00800.htm
キヤノンの工場建設を巡り、大分市コンサルタント会社「大光」など3社が、工事の受注を口利きした見返りに大手ゼネコン鹿島から提供された裏金など三十数億円の所得を隠したとされる事件で、東京地検特捜部は10日、新たに大光社長・大賀規久容疑者(65)ら7人を法人税法違反(脱税)容疑で逮捕した。
 関係者によると、大賀容疑者は大量のキヤノン株やトヨタ株を保有しており、特捜部では脱税資金の大半は株購入に充てられたとみている。
 ほかに逮捕されたのは、元大分県議会議長で、大賀容疑者が代表取締役を務めるコンサルタント会社「ライトブラック」(大分市)の元監査役・長田助勝容疑者(80)ら。
 発表などによると、大賀容疑者らは2006年5月期までの2年間に、9日に逮捕された大阪市内のコンサルタント会社社長難波英雄容疑者(61)ら5人と共謀し、所得隠しの疑いがある三十数億円のうち、ライトブラックの所得約9億7600万円を隠し、法人税約2億9200万円を脱税した疑い。
 大賀容疑者は周辺関係者に「裏金を受け取ったことはない。株は遺産相続した金などで買った」と話し、脱税の容疑を否認しているという。》

▼大賀容疑者「御手洗家と200年の仲」、キヤノン関連仲介
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090211-OYT1T00457.htm
《「キヤノンの工事は大賀社長を通すのが決まり事になっていた。求められれば、裏金でも支払わざるを得なかった」。
 キヤノンの工場新設工事を巡る法人税法違反事件で逮捕されたコンサルタント会社「大光」(大分市)社長・大賀規久容疑者(65)側に30億円以上のリベートを提供していた鹿島の幹部はこう証言した。下請け業者に過ぎない大賀容疑者が大手ゼネコンを恐れさせるほどになった力の源は、財界トップに上り詰めた御手洗冨士夫キヤノン会長(73)の威光だった。
 「私は社員の結婚式には一切、出ないことにしていますが、新郎のおやじの友人として出席しました」
 大賀容疑者の知人によると、2003年5月に都心のホテルで開かれた結婚披露宴で、御手洗会長はこうあいさつした。当時はキヤノン社長に就任して9年目。新郎はキヤノンに勤めている大賀容疑者の長男だった。
 大賀容疑者は、御手洗会長との関係を「200年の仲」と称していた。大賀容疑者の親族らによると、両家はともに大分県佐伯市で江戸時代から続く旧家で、御手洗家は庄屋を務めたような家柄だという。
 御手洗会長の叔父でキヤノン創業者の毅・元会長(故人)と大賀容疑者の父親は親友で、御手洗会長は大賀容疑者の実兄と佐伯鶴城高の同級生。実兄は1961年、キヤノンの前身のキヤノンカメラに入社し、御手洗会長も同期だった。
 実兄は実家の工務店「日建」を継ぐため77年12月に退社するが、「退職後もアポなしで御手洗会長に会いに来ていた」(キヤノン元幹部)という。日建はキヤノン新宿本社の内装工事などを受注し、御手洗会長も91年に横浜市内の自宅を同社から購入した。
 ◆私設秘書
 初めは日建の社員だった大賀容疑者は、この一族ぐるみの付き合いを強固にした。御手洗会長がゴルフをする時には予約や送迎を引き受け、地元・大分に帰ると移動用の高級車を用意。常に影のように付き添う大賀容疑者は、いつしか「会長の私設秘書」と見られるようになった。
 43歳でキヤノンUSAの社長、2年後に本社の役員に就任。「将来の社長」と目されていた御手洗会長に、大賀容疑者が尽くした理由は同郷のよしみだけだったのか。
 以前、大賀容疑者と取引のあった鹿島元社員は、「独立して、東京で活躍したい」と言われたことを記憶している。その数年後の90年、大賀容疑者はキヤノングループの工場や社宅用地の取得・開発を目的に「大光」を設立。元社員は「御手洗会長らの人脈でやっていけると思ったから、独立したのだろう」と受け止めたという。
 元社員の感想通り、大光などは静岡県裾野市の研究施設などの用地開発を手始めに、キヤノン関連のいくつもの工事でゼネコンの下請けに入り、大分事業所の警備も請け負った。御手洗会長が副社長、社長、日本経団連会長と階段を上ると、大光などのビジネスも拡大。やがてキヤノンへの売り込みで、企業から謝礼を受け取るようになった。
 ◆大賀詣で
 04年10月、脱税事件の舞台になったデジタルカメラ工場が大分市に完成した。完工式の会場にできた輪の中に御手洗会長や広瀬勝貞大分県知事とともに、大賀容疑者の姿があった。工事や資材調達を請け負いたいと、大賀容疑者の前に名刺を手にした地元業者の列ができたという。
 鹿島に工場用地の造成を発注した大分県土地開発公社の幹部は「大賀さんに特別な便宜は図っていない」と言いながらも、「知事や御手洗会長と対等に話をするような人で、私たちには雲の上の存在」と話す。
 今回の事件では、大賀容疑者とともに逮捕された元大分県議会議長の長田助勝容疑者(80)も御手洗会長の親類にあたる。
 御手洗会長は10日、大賀容疑者の逮捕を受けて東京・大手町の経団連会館で取材に応じ、「友達が起こした事件。非常に遺憾に思っているが、それ以上でもない。徹底的に調査し、事件にはキヤノンも私も関与していないことははっきりしている」と話したが、キヤノン代理人のように振る舞う大賀容疑者を知るゼネコン関係者は、御手洗会長の責任は重いと指摘する。
 鹿島の元幹部は完工式で見た光景が忘れられないという。「式を主催したうちが呼んでもいないのに、大賀さんがキヤノンの側にいるんだよ。大光や日建はうちから見たら下請け会社。施主の方に座っているのは、おかしいでしょ」》

▼工場用地造成「鹿島選定を」キヤノン大分県側に要請
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090212-OYS1T00294.htm
キヤノンの工場建設を巡る法人税法違反事件で、脱税の舞台となった大分市の2事業所の用地造成工事について、キヤノンが事業主体の大分県土地開発公社に対し、鹿島への発注を求める「要請文」を送っていたことがわかった。
 工事は要請通り、計約80億円の随意契約で鹿島が請け負っていた。鹿島はこの工事でも、東京地検特捜部に逮捕された大分市コンサルタント会社「大光」社長・大賀規久容疑者(65)側にリベートを提供したとみられ、大賀容疑者の口利きを背景に「鹿島ありき」で業者選定が進んだことがうかがえる。
 同公社はデジタルカメラ工場の用地造成を2003年12月に約31億6700万円で、プリンターカートリッジ工場の用地造成を05年7月に約48億1300万円で、ともに鹿島に発注したが、キヤノンは契約のそれぞれ約10〜20日前に、総務本部長の常務名の要請文を公社理事長あてに送付していた。
 いずれの文書でも、造成から建物建設までの期間が短いとしたうえで、「安全性や価格競争の面で群を抜き、必ずや弊社の期待する迅速な事業が実施される」などと鹿島を称賛。「鹿島を選定していただくよう、特段のご配慮をお願い申し上げます」と推薦していた。
 公社の内規では250万円を超える工事は原則的に入札を行うことになっていたが、公社も「緊急性を要する」として要請を受け入れ、ほかの大手ゼネコンから見積もりをとることもなく、鹿島との随意契約に踏み切っていた。
 緊急性を理由とした随意契約は台風などの災害時以外には適用例がなく、契約当事者以外の企業の意向に沿って発注先を決定するのも極めて異例。同公社の久保隆専務理事は「キヤノン誘致が前提の工事なので、意向を打診したが、あくまでも公社が主体となって鹿島を選定した」と話しているが、鹿島の選定経緯を示す記録は残っていないという。》