小泉の乱――2009年02月13日

▼『麻生降ろし』小泉の乱 『給付金』反対 チルドレン同調も
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009021390070751.html
郵政民営化見直し問題に端を発した自民党内の亀裂が十二日、一気に拡大した。郵政民営化推進派議員の会合での小泉純一郎元首相の発言は、「麻生降ろし」の狼煙(のろし)を上げたに等しい。麻生離れを強める党内の中堅・若手議員らの動きを後押しし、定額給付金問題が再燃するのは確実。麻生太郎首相の政権運営は窮地に追い込まれてきた。
 小泉氏はこの日、現職の首相である麻生氏をこき下ろし「完全に戦闘モード」(出席者)だった。
 小泉氏の首相への怒りは、民営化見直し発言がきっかけなのは間違いない。しかし、会合では「郵政民営化」という言葉は口にせず「若手が意見を出すと、執行部は後ろから鉄砲を撃つなというが、最近は首相が前から、これから(選挙で)戦おうとしている人に鉄砲を撃っている」と首相批判一色。それだけに衝撃度は大きい。
 執行部にとって深刻なのは、定額給付金の財源を確保する二〇〇八年度第二次補正予算関連法案の衆院再可決に反対した発言だ。
 衆院での再可決に必要な三分の二の議席は、小泉氏が〇五年の郵政選挙で獲得。そのときに初当選した「小泉チルドレン」や小泉ブームで当選できた若手・中堅議員に、小泉氏は依然、強い影響力を持つ。こうした議員ら十六人が小泉発言に同調すれば、再可決はできない。万一、定額給付金が実現しなければ、麻生政権の看板政策だけに、首相退陣に直結しかねない。
 実際、小泉氏は発言の最後で「難局を切り抜けるよう、皆さんと知恵を出していきたい」と、ポスト麻生の模索までにおわせた。
 首相が「民営化に賛成じゃなかった」と発言してからすでに一週間。党内の騒動は収束するどころか、小泉発言により党内対立は激化の様相となった。
 党幹部は十二日夜、「党を二分する全面戦争になるような話だ。その覚悟があるのか」と、早くも反麻生の動きをけん制した。これに対し、ある幹事長経験者は「日本の運命は変わった」と政権の瓦解を予測。中川秀直元幹事長が同日夜、町村派若手と都内で開いた会合では、小泉氏の発言に共感するとの意見が相次いだ。
 小泉氏は政局の最前線から身を引き、今期限りでの政界引退も表明済みだ。党内の動揺ぶりは選挙の審判を経ていない麻生政権の脆(もろ)さと、郵政選挙で三百議席を獲得した小泉民営化路線の強さを如実に浮き彫りにした。
◆『郵政』の逆襲 官邸苦慮
 郵政民営化の見直しに言及した麻生首相が十二日、小泉元首相から強烈なしっぺ返しを受けた。首相が景気対策の目玉に掲げる定額給付金も一刀両断にされた。官邸サイドは、首相自ら招いた「郵政政局」を収束させるどころか、小泉氏の乱入による戦線拡大に頭を抱えている。
 「その話を聞いていませんので、何ともお答えのしようがありません」。首相は同日夜、記者団から小泉発言について問われたが、淡々とした口調を崩そうとしなかった。
 だが、首相は十日に小泉氏と電話した際、十二日の発言とほぼ同じ内容の批判を浴びせられていた。
 河村建夫官房長官は記者会見で、電話会談について「お互いの意思の疎通が十分図られたと思う」と強調していたが、実際は違っていた。電話会談は河村氏が薦めたものだが、結果的には小泉発言の伏線になった。
 官邸サイドは、首相の郵政発言について「首相がこれ以上、(郵政問題に)言及されることはないだろう」(河村氏)と“封印”することで火消しを図ろうとしていた。
 首相が口を開くたびに物議を醸しているだけに、事態を収拾するには「首相に黙っていてもらうしかない」(政府高官)ということだ。
 ところが、小泉発言が飛び出し、野党が郵政民営化をめぐる政府・与党内の「内紛」を追及するのは確実。給付金問題を蒸し返すのは間違いない。もはや首相はだんまりを決め込める状況でない。
 政府筋は十二日夜、「小泉さんの苦言を真摯(しんし)に受け止め、政策の実現で実績を積み上げていくしかない」と言葉少なに語った。》

▼「前から鉄砲撃っている」「選挙戦えない」…小泉氏の発言要旨
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090212-OYT1T01091.htm
《最近の(麻生)首相の発言について、怒ると言うよりも笑っちゃうぐらい、ただただあきれてしょうがない。一昨日、首相から「話がしたい」というので、電話でお話ししたが、「小野次郎衆院議員、世耕弘成参院議員の(ブログ上の首相批判の)文章をファクスで首相官邸に送るから、よく読んで下さい」と言った。
 首相、執行部の方針に批判的な意見を若手が出すと、執行部からは「後ろから鉄砲を撃つな」と抑え込みがかかるが、最近の状況は、首相が前から戦おうという人に鉄砲を撃ってるんじゃないか。「発言は気をつけてくれ」と言っておいた。
 私についても(首相は)「常識の通じない男だ」とか「奇人変人」とか言ってるようだが、自分では常識をわきまえている普通の人だと思っている。9月までには選挙を戦わなければならない。自民党がどうなるか、みんな心配している。私もたまには非常識なことをするかもしれないが、常識的なところに持って行くためによく話し合うことが必要だ。
 ねじれ国会は、決してそんなに悪いことじゃない。今、政局より政策優先だという国民の声が強い。衆院参院で(政策が)違ったら、国民の納得できる案を協議してもいいんじゃないか。
 定額給付金についても、首相は(高額所得者が受け取るのは)さもしいとか言う。「自分はもらわない」「いやそんなことは言ってない」とか、いろいろ言っている。私はこの法案が(衆院の)3分の2を使ってでも成立させなくてはならない法案だとは思ってない。「あの時賛成したけど、実はそうではなかった」と言いたくない。もっと参院と調整し、妥当な結論を出してほしい。
 9月までには国民の信を問わなくてはならない。政治で一番大事なのは信頼感。特に首相の発言に信頼がなければ、選挙が戦えない。》

▼小泉氏発言:自民に広がる動揺 倒閣運動への波及懸念
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090213k0000m010118000c.html
《小泉氏の発言は、自民党内の麻生離れの動きに「お墨付き」を与えかねず、党内には「中堅・若手の倒閣運動に結びつくと、大変なことになる」(町村派幹部)との懸念が強まっている。……町村派の主導権争いに敗れ、森喜朗元首相とたもとを分かった中川秀直元幹事長も「今後の展開次第では民営化を堅持する行動を起こしていかなければならない」と語り、小泉路線の堅持を強調した。麻生政権と距離を置く中川氏は同日夜、東京都内の料理屋で町村派2回生を集め、支持勢力拡大に乗り出した。小泉氏があいさつの中で、総額2兆円規模の定額給付金の効果に疑問を投げ掛けたことも、首相にとって大きな打撃。08年度第2次補正予算関連法案は参院で審議しており、衆院での再議決の際、自民党から16人以上の造反が出れば、再可決できない。民主党鳩山由紀夫幹事長は12日、東京都内で記者団に対し「小泉氏を信奉する人は行動してほしい」と述べ、造反を促した。……ただ、自民党内には地方の疲弊をもたらしたとして、小泉改革への不満も根強く、閣僚の一人は「小泉さんの負の遺産もたくさんある」と吐き捨てるように言った。久しぶりの「小泉劇場」に対し「今回の発言で若手は余計に首相の悪口を言い出す。元首相が現首相の足を引っ張ってどうする」(閣僚経験者)と次期衆院選への影響を懸念する声も出ている。》

▼小泉氏発言に、麻生首相は平静装うが…
http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp3-20090213-460220.html
《麻生政権支持の立場を示している森喜朗元首相は同日夜、都内の会合場所から帰る際、小泉氏発言に関する報道陣の質問を「どけ」「うるさい」と、不機嫌そうに遮った。会では河村建夫官房長官らに「首相が余計なことを言うからこうなる」と不快感を示したが、麻生氏を支える考えも示したという。》

▼「親心だ」「今ごろ…」小泉氏の首相批判に閣僚戸惑い
http://www.asahi.com/politics/update/0213/TKY200902130103.html
《小泉元首相が麻生首相の郵政見直し発言を批判したことに、13日の閣議後の記者会見で、各閣僚は一様に戸惑いをみせた。
 河村官房長官は、麻生首相閣議後、「小泉首相の進めてきた郵政民営化の大方針はいささかも違えることなくやっている」と語ったことを明らかにした。そのうえで河村氏は「厳しいおきゅうを据えられた。叱咤(しった)激励としてしっかり受け止める。本当に殺す気で殴る親はいない。親心だ」と語った。
 甘利行政改革担当相は「しっかりするようにと、小泉流の表現でおっしゃったと受け止めている」。鳩山総務相は「我々も重く受け止めなければならないが、大きな心で麻生首相をご理解いただければありがたい」。佐藤沖縄・北方担当相は「思い入れて民営化した本人だから、ああいう言葉が出ても致し方ない」と理解を示した。
 一方、小泉氏が定額給付金衆院再可決に異論を唱えたことには批判が相次いだ。
 舛添厚生労働相は「第2次補正予算として閣議決定しているし、党の決定であれば従わないといけない。そうじゃないと政党政治は成り立たない。いかがなものかと思う」と疑問を呈した。「トゥー・レイト(遅すぎる)。言うならもっと早く言ってください」とも述べた。中川財務・金融相は「首相までやられた方がいまごろ反対と言うのは、ちょっと理解に苦しむ」と批判した。 》

▼小泉氏発言、政権運営に“暴風”…「倒閣に発展」の見方も
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090213-OYT1T00071.htm
自民党の小泉元首相が12日、麻生首相を痛烈に批判したことは、党内で「麻生降ろし」の動きにつながる可能性がある。特に目玉政策である、定額給付金を盛り込んだ2008年度第2次補正予算関連法案の衆院再可決に異議を唱えたことは、政権の命運にかかわる問題で、超低空飛行で航行していた麻生政権が暴風雨に突入した格好だ。……会には、小泉氏や、中川秀直元幹事長、武部勤元幹事長、石原伸晃幹事長代理、塩崎恭久官房長官に、05年衆院選で初当選した「小泉チルドレン」ら18人が出席。小泉氏は郵政民営化を「改革の本丸」と位置付けていただけに、出席者の一人は「首相の郵政民営化見直し発言は虎の尾を踏んでしまった」と受け止めた。首相周辺は「もう引退する人の発言で、たいしたことはない。線香花火のようなものだ」と強調するが、「小泉氏のお墨付きが出た。麻生首相ではダメという動きは活発化し、倒閣運動につながる」(若手)と見る向きさえある。小泉氏の発言により、2次補正予算関連法案の採決で造反者が出る可能性が出てきた。政府・与党は来週にも、衆院の3分の2以上の多数で再可決する方針だが、「チルドレンが軽挙妄動する恐れはある」(副幹事長)といった懸念が生じている。16人反対すれば再可決できず、その場合、麻生政権の命取りになりかねないだけに、執行部は引き締めを強める方針だ。……それでも、執行部には「再可決できなかったら政権は終わりだ。そこまで覚悟して具体的に小泉氏が動くつもりなのかどうかは、見極めないといけない」(参院幹部)との不安も残っている。》

▼民主、給付金法案採決は小泉氏帰国後 再可決で造反誘う
http://www.asahi.com/politics/update/0213/TKY200902130142.html
《小泉元首相が、定額給付金の財源確保のための08年度第2次補正予算関連法案の再可決に異論を唱えたことを受けて、自民党は13日の正副国対委員長会議で、参院での否決後に衆院で再可決する方針を確認した。一方、民主党輿石東参院議員会長は参院での採決について、小泉氏が海外出張から戻る20日以降とする考えを示した。再可決のための衆院本会議で小泉氏に「踏み絵」を迫ることを通じ、自民党内の造反を誘うねらいがある。
 自民党大島理森国会対策委員長は正副国対委員長会議で「政府が決めた方針に従い、3分の2で堂々と受けてたつ」と述べた。小泉氏が主張した定額給付金を巡る与野党協議についても、これまで平行線をたどったため応じない方針だ。定額給付金の実現を強く主張してきた公明党の太田代表も13日の記者会見で「法案は3分の2で成立させなければならない」と強調した。
 一方、輿石氏は13日の党参院議員総会で、参院での採決の時期について「衆院再可決はおかしいと元首相が言っている。お帰りを待って法案を扱えばいい」と述べた。
 小泉氏は日ロ関係について有識者と意見交換するため、14日にモスクワへ出発し、20日午前に帰国する予定だ。 》