アカデミー賞受賞

▼「おくりびと」が外国語映画賞 米アカデミー賞
http://www.daily.co.jp/newsflash/2009/02/23/0001718013.shtml
《映画の祭典、第81回米アカデミー賞の授賞式が現地22日(日本時間23日)、米ロサンゼルスのコダックシアターで開かれ、「おくりびと」が日本映画として初めて外国語映画賞を受賞した。主演の本木雅弘(43)が、滝田洋二郎監督(53)、広末涼子(28)らと受賞ステージに立ち、オスカー像を手にした。日本作品では「つみきのいえ」も、短編アニメ映画賞を受賞した。主要賞では「スラムドッグ$ミリオネア」が作品、監督など最多8部門を制覇。主演男優賞は「ミルク」のショーン・ペン。主演女優賞は「愛を読む人」のケイト・ウィンスレットに輝いた。
 本木の思いを込めた作品が、日本映画初の快挙をもたらした。
 「『The Departures』、Japan!」と受賞作品が発表されると、タキシード姿の本木は「信じられない」と頭を抱えながら、滝田監督とステージに上がった。共演の広末、余貴美子(52)も登壇し、喜びを分かち合った。
 あいさつに立った滝田監督は英語でスピーチ。「ありがとうございます。映画があるから私はここにいる。これは私にとって新たな旅立ち(Departure)です。我々はまた戻ってきます」。黄金のオスカー像を高らかに掲げると、客席のブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリーらハリウッドスターたちも温かい拍手を送った。
 生と死を、日本文化の美を通して描いたことが高く評価された。「おくりびと」は、失業したチェロ奏者が故郷に帰り、ひょんなことから納棺師となる物語。本木がインド旅行中に納棺の儀式を目にして着想、映画化へ尽力した。演技でも納棺の所作を優美に表現。国内の映画賞も合計60冠と総ナメにしてきた。
 日本映画ではこれまで前身の名誉賞を1951年の「羅生門」(黒澤明監督)など3作品が受賞したが、1956年に外国語映画賞となってからは初めての受賞。これまで12作品が本選にノミネートされていた。
 滝田監督は授賞式後の会見で「この賞の半分は主演の本木雅弘さんのもの。言葉を通じない人たちにこの映画が理解してもらえたのがうれしい。映画は言葉を、国を超える」と語った。日本の「おくりびと」が、世界に感動を「おくる」作品となった。》

▼「おくりびと」多彩な持ち味で栄冠つかむ
http://www.sanspo.com/geino/news/090223/gnj0902231321018-n1.htm
《米アカデミー賞で最優秀外国語映画賞に選ばれた滝田洋二郎監督の「おくりびと」は「死」をテーマに掲げた異色の作品。関係者の深い関心と多彩な持ち味を生かして栄冠をつかんだ。
 公開前、地味な題材の「おくりびと」の興行はあまり期待されていなかった。ところがこれまでに興行収入が30億円を超える予想外のヒット作に。モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞するなど海外でも高い評価を受けた。
 ヒットの第一の理由は作品づくりへの純粋さ。そのキーパーソンが主演の本木雅弘さんだ。
 10数年前にインドを旅した際、死者を見送る儀式を目にして生と死が隣り合う死生観を体感。その後、遺体をひつぎに納める「納棺」の世界を知り「神秘的かつ映画的」と映画化の構想を長く温めていた。旧知の中沢敏明プロデューサーに構想を打ち明け、企画が進み出した。
 映画では、心を込めて死者に接する美しい所作で生命の尊厳を表現した本木さんだけでなく、山崎努さんや余貴美子さんら力量のある俳優が演じた市井の人々の姿が共感を呼んだ。さらに滝田監督ならではのユーモアや、放送作家として活躍する小山薫堂さんの脚本による時代性が加わって、文化の違いを超えた作品が完成した。》

アカデミー賞:世界に通じた「生」「絆」 「おくりびと」滝田監督「新しい旅立ちだ」
http://mainichi.jp/enta/cinema/news/20090223dde041200002000c.html
《生と死に真摯(しんし)に向き合い、家族のきずなを問い直した日本映画がアメリカでも認められた。22日(日本時間23日)にロサンゼルスで授賞式が行われた第81回アカデミー賞で、滝田洋二郎監督の「おくりびと」が外国語映画賞加藤久仁生監督の「つみきのいえ」が短編アニメーション賞を獲得。日本映画の底力を見せつけた。
 ◇滝田監督、何度も「ありがとう」
 外国語映画賞の発表では、プレゼンターが「Departures」と「おくりびと」の英語タイトルを告げた。主演の本木雅弘さん、広末涼子さんらと壇上に立った滝田監督は「ありがとう、アカデミー。ありがとう、皆さん。ありがとう、助けてくれた人たち。とてもとても幸せです。これが私にとって新しい旅立ちになる」と英語で語り、最後に日本語で「ありがとうございます」と付け加えた。
 「おくりびと」は、納棺師という職業を選んだ主人公がさまざまな死と出合うことで、生を見つめ直す物語。主演の本木雅弘さんが、インド旅行や青木新門さんのエッセー「納棺夫日記」などに触発されて発案した。
 遺体が何度も登場し、職業差別も描かれることなどから、当初は製作資金集めが難航。だが、プロデューサーらの働きかけでTBSが出資、松竹が配給することが決まった。
 死を正面から扱いながら陰うつさはなく、むしろ生への希望に満ちた作品だ。昨年9月に公開され、興行収入30億円を超すヒットとなった。20日に授賞式があった日本アカデミー賞でも10部門で受賞を果たした。
 滝田監督はこの映画について「日本映画が扱わない題材なので、ぜひやりたいと思った。撮り始めた時は、どんな映画になるのか、観客に受け入れられるのか分からなかった。死よりも生を描き、人間同士のつながりをうまく描けたのではないか」と話していた。
 ◇「つみきのいえ」加藤監督、「とても重い」
 「つみきのいえ」の加藤監督は1977年生まれ。多摩美大在学中からアニメーション製作に取り組んだ。卒業後、映画製作会社ロボットに所属して、テレビCM用などのアニメを手がけてきた。
 加藤監督はオスカーを手に「とても重い。ありがとう、支えてくれた皆さん。ありがとう、両親。ありがとう、アカデミー。ありがとう、アニメ」と英語でスピーチした。
 今回の他の候補作は「ラバトリー・ラブストーリー」「オクタポディ」「マジシャン・プレスト」「ディス・ウェイ・アップ」だった。
 ◇過去の主な日本関係のアカデミー賞
年度
51 名誉賞(最優秀外国語映画)=「羅生門」(黒澤明監督)
54 同=「地獄門」(衣笠貞之助監督)
   衣装デザイン賞=和田三造「地獄門」
55 名誉賞=「宮本武蔵」(稲垣浩監督)
57 助演女優賞ナンシー梅木「サヨナラ」
75 外国語映画賞=「デルス・ウザーラ」(黒澤明監督のソ連映画
77 ドキュメンタリー長編賞=「愛のファミリー」(日本、アメリカの合作)
85 衣装デザイン賞=ワダ・エミ「乱」
87 音楽(作曲)賞=坂本龍一ラストエンペラー
89 名誉賞=黒澤明
92 衣装デザイン賞=石岡瑛子「ドラキュラ」
98 ドキュメンタリー短編賞=「ザ・パーソナルズ−−たそがれのロマンス」(伊比恵子監督)
99 短編アニメーション賞=「老人と海」(日本、ロシア、カナダ合作)
02 長編アニメーション賞=「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督)》

▼日本映画史に新たな金字塔、普遍的題材に評価…アカデミー賞
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20090223-OYT1T00608.htm?from=nwlb
《日本映画史に新たな金字塔が打ち立てられた――。第81回米アカデミー賞では、外国語映画部門で、“静かなる鎮魂”を描いた滝田洋二郎監督の「おくりびと」、短編アニメーション部門で加藤久仁生(くにお)監督の「つみきのいえ」が、それぞれ初の栄冠に輝いた。
 「これからどんな3時間になるのか楽しみです」と余裕の表情で会場入りしていた滝田監督や、主演の本木雅弘さんは、壇上で満面の笑みをたたえ、喜びを表していた。
 外国語映画部門では、昨年のカンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したフランス映画「クラス」、戦争の不毛さを描いたイスラエル映画戦場でワルツを」など、社会的なテーマを扱った他国のライバル映画の下馬評が高かった。しかし、人間の生と死という普遍的な題材を映画化した「おくりびと」が最終的に賞を制した。
 一方、短編アニメーション部門を制した加藤監督は、受賞後の記者会見で、「アカデミー賞は歴史と名誉があるので、賞を頂けたのはとてもうれしい。英語はまったくしゃべれないので、(スピーチでは)シンプルな言葉で感謝を伝えようと思った。何となく言えたかなと思っている。日本で待っているスタッフに感謝している。早く喜びを分かち合いたい。短編アニメでも自分が表現できていない部分があるので、これからも短編を続けたい」と落ちついた口調で語っていた。》

▼「賞の半分は本木さんのもの」 「おくりびと」の滝田監督インタビュー
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090223/tnr0902231401020-n1.htm
《第81回アカデミー賞外国語映画賞を獲得した「おくりびと」の滝田洋二郎監督が受賞後に会見を行った。主なやりとりは次の通り。
 −−今の気持ちは
 「日本人は、いや世界中どこでも同じだが、死を忌み嫌う傾向がある。企画をいただいたときは不安だった。しかし、実際に(映画で扱っている)納棺師の仕事をみて、これはやらなければいけないと感じた。また、主演の本木雅弘さんが本当にのめり込んで演じてくれた。今日の賞の半分は本木さんのものだ」
 −−米国で認められたということについては
 「映画は言葉を超えるということを実感した。この映画は死を扱っているようで、実は人間がどう生きていくのかということを扱っている。その意味で、人間の普遍的な感情を描けたと思う」
 −−他の有力作品をおさえて名前が呼ばれたときの感想は
 「信じられなかった。これまでアカデミー賞でノミネートされた日本映画はほとんどが時代劇だった。その意味で、現代物が認められたことはたいへんうれしい」》

▼「おくりびと」ロケの銭湯に取材殺到
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY200902230295.html
庄内地方を舞台にした映画「おくりびと」(滝田洋二郎監督)が23日、米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。庄内の美しい自然や街並みだけでなく、山形交響楽団飯森範親音楽監督が出演、東北芸工大の企画構想学科長に今春、就任予定の小山薫堂氏が脚本を担当するなど山形にゆかりの深い作品だ。県内各地で、喜びの声が上がった。
 ◆鶴乃湯
 鶴岡市本町2丁目の銭湯「鶴乃湯」には、受賞の知らせで新聞やテレビの取材が次々と。三谷享子さん(67)は午後3時からの営業を遅らせて撮影や取材に応じ、常連客などの電話に追われた。
 「受賞すると思っていました。おめでとうと言いたい。映画は主人(政弘さん)と一緒に試写会で見て三川町でも2回見ています。もう一回見たい。感激で泣きました。本当に心のこもった素晴らしい映画ですよ」
 「おくりびと」に感激して月光川の河原で石に思いを託す「石文」を拾って届けた人もいる。酒田市の会社員・斎藤恒久さん(40)は石文を届けて以来、鶴之湯の「常連」となった。
 撮影では、スタッフが数十人押しかけた。脱衣場の鏡にベニヤを張って小さくし、湯船の色を青く変えたが、玄関の看板などは同じまま。三谷さんはロケを見守った。「おくりびと」のポスターと滝田監督、主演の本木雅弘さん、笹野高史さん、故峰岸徹さんの色紙が飾ってある。映画を見て立ち寄る観光客も多く、記念写真を撮ってゆく。アカデミー賞で人気も出そうだが、「どうだろう。もう、年ですから」。
 ◆酒田市
 メーンロケ地の酒田市では、米アカデミー賞と20日の日本アカデミー賞の受賞を伝える看板を市役所に掲げた。撮影に協力したNPO法人「酒田ロケーションボックス」(萩原吉郎理事長)のメンバーは、看板を前に「万歳」で祝った。副理事長のすし店主佐藤英俊さん(44)は「涙が出てきた。酒田を世界に発信してくれた。ありがたい。滝田監督やスタッフ、出演者に感謝したい」と話していた。 》

▼松竹:「おくりびとアカデミー賞受賞で株価急騰
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090224k0000m020056000c.html
《23日の東京株式市場で松竹の株価が、配給映画「おくりびと」が第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞したことが好感されて急騰した。「久しぶりの明るいニュース」(大手証券)に、映画界だけでなく市場も沸いた格好だ。
 松竹株は、前週末終値比5円高の651円で取引がスタート。受賞が伝わった午後1時すぎから一気に上昇し、この日の最高値である98円高の744円で取引を終えた。》