西松建設を巡る疑惑 まとめ Vol.23

献金みかじめ料? 西松事件で浮かぶ「政・業」の危うい“パワー・バランス”
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090315/crm0903151801011-n1.htm
小沢一郎民主党代表の資金管理団体陸山会」の政治資金規正法違反事件で、準大手ゼネコン「西松建設」(東京)が拠出した巨額の違法献金は、小沢氏の影響力を期待し東北地方の公共工事受注を狙ったものだった疑いが強まっている。政治家、ゼネコン、公共工事…。事件をめぐるキーワードは東京地検特捜部がかつて摘発したゼネコン汚職を彷彿とさせ、旧態依然とした「政・業」の癒着構造が、形を変えて温存されてきたことをうかがわせる。

 「(献金は)ダムや空港など東北地方の公共工事の受注のためだった」
 ダミーの政治団体を使った小沢氏側への迂回献金が、平成18年までの12年間で2億円近くにのぼった西松建設。捜査関係者によると、西松前社長の国沢幹雄容疑者(70)ら西松の関係者は特捜部の調べに、“実弾”の趣旨についてそう供述しているという。
 公共工事の受注を狙った政治家側へのカネ−。
 すぐに思い起こされるのが、5〜6年に建設相や宮城県知事、仙台市長らが、大手ゼネコン幹部らとともに摘発されたゼネコン汚職事件だ。ゼネコン側が、公共工事をめぐる、いわゆる“天の声”を期待して政治家にわいろを渡すという「政・業」の癒着構造があぶり出された。
 事件の背景には、東北地方の強固な談合体質とその変質があったといわれている。
 東北地方の政界関係者が明かす。
 「東北では古くから大手ゼネコンの支店幹部が談合の仕切り役となって業界をまとめ、うまみのある大規模工事は大手が独占していた。西松などの後発組は、それが不満で発注権限を持つ地方首長らにわいろを渡すようになり、強固だった談合組織に亀裂が入った」
 西松関係者によると、ゼネコン汚職後、西松が頼ったのが、自民党を離党したばかりの小沢氏だった。
 西松と小沢氏との関係の背景には、自民党元副総裁の故金丸信氏の存在がある。金丸氏は竹下派七奉行の中でも、小沢氏を特に重用。金丸氏の次男が西松元社長の娘と結婚しており、「金丸氏から西松を託されたのが小沢氏だった」(西松関係者)という。
 建設業界に君臨した故田中角栄元首相の秘蔵っ子とも呼ばれた小沢氏は、自民党を出た後も、東北地方の建設業界に影響力を持ち続けてきたとされる。
 西松はこのころ、ダミーの政治団体を使った小沢氏側への迂回献金を始めた。 「○○(大手ゼネコン)さんからは、これくらいの献金を受けている。西松さんも、もっと増やすことはできないのか」
 小沢氏側の窓口は、小沢氏の「側近中の側近」といわれた元秘書だったとされる。
 西松は元秘書と、年間2500万円程度を献金する約束を取り交わした。献金先を指示されるなど、元秘書の“言いなり”だった。
 「元秘書は東北の公共工事に強い影響力があった」
 西松元幹部はそう話すが、小沢氏の“虎の威”を借りた結果であるのは想像に難くない。

 ゼネコン汚職後、業界の“手法”はどのように変化したのだろうか。
 東北の建設業界に詳しい国会議員秘書は「ゼネコン汚職後に水面下で談合は復活したが、業界では教訓として、わいろによる受注工作は行わなくなった」と前置きし、こう話す。
 「代わりに頼ったのが小沢氏の影響力だ。依然として大手ゼネコン支店幹部が談合を仕切るが、その後に小沢氏の元秘書の了承を得て、受注額に応じて小沢氏側への献金額が決まる。つまり、裏のわいろが表の献金に変わったわけだ」
 捜査関係者の話では、小沢氏側が18年まで、多数のゼネコンから年間総額2億円の資金を集めていた疑いが強いことが分かっている。
 そのうちの多くが、東北地方を中心とした下請け業者側をダミーにした献金やパーティー券の購入だったとみられている。ある下請け業者は「献金の入金が遅れると、小沢氏の元秘書から『早く振り込め』と催促された」と証言した。
 ただ、献金が特定の工事受注のためかというと、必ずしもそうではないという。
 ゼネコン関係者はこう打ち明ける。
 「業界では、小沢事務所に受注の邪魔をされたくないから競って献金するし、選挙の応援もする。献金は保険みたいなもの。一種のみかじめ料といってもいいかもしれない」
 みかじめ料とは、“暴力装置”が飲食店などから徴収する用心棒代のことだ。
 建設業界は度重なる談合の摘発や公共工事の減少などで弱体化し、そこに政治家側が付け入って幅広くカネを徴収する−。両者の微妙なバランスを示す象徴的な比喩(ひゆ)といえる。
 捜査関係者は「ゼネコンと政界の癒着構造は今も昔も変わっていない」とした上で、こう指摘した。
 「政治家は基本的に何もしないことが多い。隠然たる影響力をちらつかせて業界から献金を集める。それが法に触れず、有効にカネを集める手口だ」
 小沢氏は公設第1秘書の大久保隆規容疑者(47)が逮捕された後の記者会見で「私はなんらやましい点もありませんし、政治資金規正法にのっとって正確に処理し、収支もオープンにしております」と語った。
 小沢氏はこれまでも、自身の政治資金問題が浮上するたびに適法処理を強調し、その場をしのいできた。だが、そのオープンな献金の“性質”が問われたのが今回の事件である。
 「東北での影響力を期待した西松から、違法な献金を受け続けた構図は収賄とよく似ている」(検察関係者)。特捜部は、ゼネコン側などから一斉に参考人聴取して実態解明を進める。》

西松建設違法献金事件 都内の別のゼネコンも下請け利用し小沢氏側に迂回(うかい)献金
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00151179.html
西松建設の違法献金事件で、宮城県の下請け業者が証言した。東京都内の別のゼネコンも、下請け業者を利用して民主党の小沢代表側に迂回(うかい)献金をしていた実態が明らかになった。
宮城県の下請け業者は「あるゼネコンさんのお達しというのかな。『小沢さんに献金するから、よろしく頼む』と」と話した。
宮城県内の下請け業者は1998年、都内のゼネコンから、小沢代表側への献金を持ちかけられたという。
そしてそのあと、この業者の元には、小沢代表の地元の民主党岩手県第4区総支部に現金を振り込むよう、請求書が送られてきたという。
宮城県の下請け業者は「(小沢代表側から送られてきたのは?)これ(請求書)ですね。うちは金がないもんだから、『分割』というと、こういう25万(円)の請求書が来ると。それを振り込むっていう感じ」と話した。
西松建設の違法献金をめぐっては、工事費などを上乗せして下請け業者に発注し、余った資金を小沢代表の地元の政党支部迂回献金するなどの方法で、毎年2,500万円の献金が渡っていたことが、すでに明らかになっている。
小沢代表は、献金について、3月10日の会見で「何百という献金の相手方ですから、わたしが1人ずつ、1個ずつ、どういうふうになっているか(把握するのは)、物理的にも能力的にも不可能な問題で」と話していた。
また、小沢代表の事務所は、「状況がわからないので、コメントできない」としている。
特捜部は、下請け業者を介した迂回献金について、ゼネコン関係者側から事情を聴くとともに、逮捕された小沢代表の公設第1秘書・大久保 隆規容疑者(47)を追及している。》

▼小沢氏秘書ら 胆沢ダム受注調整関与か
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009031502000086.html
《準大手ゼネコン西松建設の巨額献金事件で、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書大久保隆規容疑者(47)=政治資金規正法違反容疑で逮捕=や別の公設秘書が、国土交通省発注の胆沢(いさわ)ダム(岩手県奥州市)など東北地方の大規模公共工事の受注調整に関与していた可能性があることが分かった。東京地検特捜部は別の公設秘書を参考人聴取する方針。
 特捜部は、小沢氏側の影響力が地元岩手県のほか、隣の秋田県にも及んでいたとみて、両県や国交省東北地方整備局から大規模工事に関する資料の任意提出を受けたもようだ。
 胆沢ダムは二〇一三年の完成予定で、総事業費は約二千四百四十億円。鹿島、清水建設など三社の共同企業体(JV)が本体工事を受注した。西松は三社のJVで関連工事を約百億円で受注し、同社の請負額は約四十七億円だった。
 西松は近年、岩手県内では胆沢ダム関連工事のほか、同県発注の花巻空港用地造成工事、秋田県内では、国交省発注の森吉山ダム建設本体工事、同県発注の県立武道館建築工事などの大規模工事を受注していた。
 関係者によると、東北地方での大規模公共工事の受注業者は談合で決まり、その調整過程で小沢氏側の影響力は無視できなかったという。JVの組み合わせも小沢氏側の意向が反映されていたという。》

▼社名出ぬよう下請け使い、小口で…小沢氏パーティー券購入
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090315-OYT1T00096.htm
《準大手ゼネコン「西松建設」から小沢一郎民主党代表側への違法献金事件に絡み、ゼネコン各社が小沢代表側からパーティー券を購入する際、下請け業者を使って、政治資金収支報告書に名前が載らない20万円以下で小口購入させていたことが、ゼネコン関係者の話でわかった。
 小沢代表の政治団体は2007年までの5年間に約4億9700万円のパーティー収入があったが、収支報告書に購入者名の記載がない収入は約4億7000万円分にのぼる。この中に、ゼネコン側からの資金提供が潜んでいることになる。
 複数のゼネコン関係者によると、東北地方では、2005年末にゼネコン業界が「談合決別宣言」を出すまで、談合が続けられる一方、各社は公共工事への影響力を期待して、小沢代表側に献金したり、パーティー券を購入したりしていた。
 ある準大手ゼネコンの元幹部は、「小沢事務所側からは年に4回程度、パーティー券購入の要請があり、秘書が1回に100万円以上のパーティー券を会社に持ってきた」と証言する。このゼネコンは20万円ずつ、自社で購入したり、下請け業者に頼んで負担させたりしたという。政治資金規正法は、20万円を超えるパーティー券の購入では、政治家側の収支報告書に購入者の名前と住所を記載するよう求めており、元幹部は「20万円ずつに分けるのは、会社の名前を出さないためだった」と明かした。
 別のゼネコン幹部も「談合決別宣言後も、子会社や下請け業者で、それぞれ20万円を超えないようにしてパーティー券の購入を続けていた」と話す。
 パーティー収入の受け皿となっていたのは、政治団体小沢一郎政経研究会」。同研究会の収支報告書によると、07年までの5年間で計19回の政治資金パーティーを開催し、計約4億9700万円を集めた。このうち、購入者の名前が記載される20万円を超す購入は、わずか約2700万円分。残りの約4億7000万円分は購入者の名前の記載がない小口購入だった。
 こうしたパーティー収入は、同団体から、小沢代表の資金管理団体陸山会」や、別の政治団体の「誠山会」「小沢一郎東京後援会」に配分されていた。この4団体の住所はいずれも、東京・赤坂のマンションの一室。さらに、「小沢一郎政経研究会」「誠山会」「小沢一郎東京後援会」の代表者は、「陸山会」の会計責任者の大久保隆規容疑者(47)(政治資金規正法違反容疑で逮捕)だった。同一住所の政治団体の間で、パーティー収入の資金移動が行われていた形になっている。
 実態が見えにくいパーティー券の小口購入について、小沢事務所は読売新聞の取材に、「捜査中で資料も押収されており、コメントできない」としている。》

▼政界窓口「業務屋」暗躍 批判浴びた“裏の存在”
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090315/crm0903150111001-n1.htm
小沢一郎民主党代表の資金管理団体陸山会」の政治資金規正法違反事件で、準大手ゼネコン「西松建設」が小沢氏や二階俊博経済産業相ら政治家側と緊密な関係を築いていた実態が明らかになってきた。西松側の窓口は、「業務屋」と呼ばれる幹部社員だった。ゼネコンの談合担当として、過去に何度も批判を浴びてきた“裏”の存在。談合の相次ぐ摘発で、西松では談合担当の役割は減る一方、公共工事への影響力を期待して政界にいっそう近づき、業界の資金力と組織力を頼る政治家側との癒着を、逆に強めていた。

 平成4年の埼玉土曜会談合や5〜6年のゼネコン汚職など、疑惑や事件が明るみに出る度、ゼネコンが業務屋を抱えている実態が批判されてきた。
 だが、西松関係者によると、西松本社では、土木営業本部などの担当常務や副部長ら数人、支店では営業担当の部長ら最低でも1人を配置し続けていた。西松前社長の国沢幹雄容疑者(70)の信頼が厚く、忠誠心の高い役員ら幹部が選任されていたという。
 西松社内では「業務」と呼ばれる談合担当役員には決裁権も与えられ、西松元幹部は「会社の陰の全権大使。業務担当の言葉は、国沢社長の言葉と同じ意味を持っていた」と振り返る。
 政治家側との折衝役を兼ねており、政治資金パーティーや政治家秘書との朝食会などにも出席。秘書相手の飲食を重ねることで、公共工事に関する情報などを入手できるメリットもあったが、別の元幹部は「そんな情報は天下りの職員からも入手できる。むしろ、受注が不利にならないよう、取りはからってもらうことが重要だった」と語る。

 「東北でゼネコン間の調整は、小沢事務所の独壇場。(ゼネコン側の)仕切り屋と事務所の秘書が調整していた」
 地元政界関係者は、こう打ち明ける。東北で影響力を持つ小沢氏と大手ゼネコン。大手ゼネコンの東北支店幹部が仕切り役となり、陸山会の会計責任者で小沢氏の公設秘書、大久保隆規容疑者(47)の前任の秘書と、受注を調整する談合を繰り返していたとされる。
 受注調整の手法はそのまま、後任の大久保容疑者に受け継がれた。
 西松側は、東北支店の副支店長などを歴任した本社の元総務部長兼経営企画部長、岡崎彰文容疑者(67)が、事実上の業務屋として大久保容疑者との窓口役を務めていたという。
 西松OBは「工事受注のためには(小沢氏側への)献金を続けるしか選択肢はなかった」とした上で、「選挙前に社員名簿を提出するなど、政界との顔つなぎ役として、業務屋は重用されてきた」と明かした。

 全国各地で談合の摘発が相次いだことを受け、ついに17年末、ゼネコン各社が「談合決別宣言」を出すと、各社の業務屋は次々と姿を消していった。だが、西松と政界とのパイプが途切れることはなかった。
 「二階さんには相当な金が行っているはずだ」
 内部事情に詳しい西松関係者はこう指摘する。捜査関係者によると、パーティー券の購入だけでなく、西松の車で二階氏を送迎するなど会社ぐるみの支援をしていたといい、西松側は二階氏側にヤミ献金をしていた疑いも浮上している。
 西松側の窓口となったのは国沢容疑者だったとされる。二階氏とは、同じ中央大学の出身で30年来の関係。最近まで親交は続いていた。岡崎容疑者は12年、東北支店を離れて本社に戻ったが、西松元幹部によると、その後は国沢容疑者の指示で、退職した18年6月まで、岡崎容疑者が二階氏の東京事務所によく出入りしていたという。
 西松OBは、「国沢前社長自身が業務屋そのものだった。歴史ある西松の株価が100円を割っているのは情けないが、責任は国沢前社長にある」とため息をついた。》


西松事件の裏にもっと根深い闇…元東京地検検事が読む
http://www.zakzak.co.jp/top/200903/t2009031340_all.html
民主党小沢一郎代表の公設秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕された西松建設事件は、小沢氏以外の政治家にも波及する可能性が出てきている。果たして検察はどこまで踏み込むのか? 元東京地検検事で弁護士の郷原信郎氏=写真=は、事件の裏にはもっと根深い闇が横たわっていると指摘する。
 「今回の容疑は規模や悪質性からいって、それほど大きなものとは思えない。にもかかわらず、衆院選が迫るこの時期、検察は政治に極めて大きな影響を与える強制捜査を断行した。常識的に考えると、この事件だけで捜査が終わるとは到底考えられない」

 郷原氏は、その根拠として「今回の事件で特捜部は(1)西松系の団体にまったく実体がない(2)献金を小沢氏の事務所に直接持ち込んだり、振り込んだのが西松建設である−という2点を立証する必要がある。それが証明できた場合のみ有罪に持ち込める」と説明。
 そのうえで、「『政治団体から献金を受け取ったのだから問題ない』という小沢氏の言い分は法律的には通る。同様のやり方で献金を受け取った政治家は、これまでも多数いるはず。小沢氏の秘書だけを逮捕するのは不自然で、この件以外の疑惑があると考えるのが自然だ」という。
 実際、西松建設のダミー団体から献金を受けたりパーティー券を購入してもらった派閥や議員も、額の大小は別として自民党二階俊博経済産業相を筆頭に多数にのぼっている。
 郷原氏は「与党であっても、先の2点を立証する必要がある。逆に言えば、小沢氏側が立件されるなら、自民党側も当然立件されるだろう。小沢氏側が立件される一方で自民党側の取り調べが単なるポーズで終わるようだと、検察は小沢氏を狙い撃ちしたと非難されても仕方がない」と話している。》