セブン&アイ 鈴木敏文

▼なぜ、「売れない店」ほどますます売れなくなってしまうのか?
http://president.jp.reuters.com/article/2009/03/16/0D574536-0D3D-11DE-90BD-EAD73E99CD51-1.php
《典型が単品量販だ。扱う商品数を半分程度に絞り込んで、売れ筋を大量発注し、単品でケース一面、棚一段にズラリ並べ、量感で訴えるのだ。顧客は思わず手を伸ばす。……一方、これと対照的なのが、売れない店が陥りがちな縮小均衡のパターンだ。鈴木氏が話す。「例えば、セブン―イレブンの店舗で、ある商品が棚に2〜3個しか置かれていないと、顧客は“あまりもの”と感じ、“選ばない理由”になってしまいます。同じ商品でも10個以上並んでいるとアピール力があり、“選ぶ理由”になって買ってみようという心理が働く。廃棄ロスを恐れて消極的な発注を行うと結局、売れないまま、廃棄ロスと機会ロスの両方が出てしまう。……」》

▼なぜ、人は同じ「500円引き」でもガソリン割引券を受け取ろうとするのか?
http://president.jp.reuters.com/article/2009/03/17/065CD638-0D47-11DE-8887-03073F99CD51.php
《08年7月、イトーヨーカ堂で大ヒットしたキャンペーンがある。買い上げ金額の合計5000円ごとに、ガソリン1リットルにつき10円の割引券をプレゼントする。ねらいはあたり、期間中の既存店全店の売上高が前年同期比で2割増えた。……同じことがらでも提示のされ方によって、受け手の選択が左右される。この現象は人間心理の大きな特徴で、前述の行動経済学ではフレーミングの法則と呼ばれる。》

▼なぜ、人は同じお金でもセブン―イレブンで下ろそうとするのか?
http://president.jp.reuters.com/article/2009/03/18/4002BC9E-0D48-11DE-A868-F6273F99CD51.php
《08年9月中間期決算では、ATM設置台数と1台あたりの利用件数の伸びにより手数料収益が増加し、純利益が前年同期から45%拡大。09年3月期の純利益予想も引き上げた。アメリカ発の金融危機で邦銀各行が軒並み減益となる中で“ひとり勝ち”状態だ。強さの理由を鈴木氏はこう語る。「一つには提携先の金融機関の多さで、現在600弱と他社を圧倒します。そして、約1万2000店のどのセブン―イレブンの店舗にもATMが設置されている。一方で、いつどこでも使えるATMの使い勝手のよさから生まれる安心感があり、もう一方で店舗のほうの買い物のしやすさがある。その両方の相乗効果がロイヤルティ(繰り返し利用したいと思う度合い)の高さに結びついているのです」
人間は自分が今持っているものには過剰な価値を与えようとする傾向がある。一度、あるブランドや企業、店舗に対して高いロイヤルティを持つと、それを持ち続けようとする心理が働く。行動経済学では現状維持バイアスと呼ばれる。結果、勝ち組は勝ち続ける構図が生まれる。ただ、鈴木流経営の強さはその構図に安住しないことにある。》

▼なぜ、セブン―イレブンでバイトをすると学生でも3カ月で経営を語り始めるのか?
http://president.jp.reuters.com/article/2009/03/20/10099BB4-0D4A-11DE-A8EC-E5013F99CD51.php
《最後は部下の育て方について考えよう。セブン―イレブンでは学生アルバイトでも始めて3カ月も経つと、経営について一家言を持つようになるといわれる。発注分担といって、バイト学生も担当商品ごとに自分で仮説を立て、発注し、結果を検証する。日々の実践が自信を植えつけるのだ。欧米の経営学者も注目する。時給が特に高いわけではない。それでも各自が力をつけ、育っていく理由をこう話す。
「人間にとって大切なのは、やはり、仕事のしがい、働きがいです。給料の高い会社は社員が定着し、給料が少しでも安かったら、離職率が高まるかといえば、必ずしもそうではなく、逆の場合もあります。
要は自分の存在価値がそこにあるかどうかです。人間は善意の生きものですから、自分を啓発する力を誰もが秘めています。それを引き出すきっかけや仕かけがその場にあるか。セブン―イレブンの場合、自分で責任を任され、成果を出していく経験が自己啓発力を引き出しているのです」》