考えるだけで動くロボット――ホンダASIMO

▼考えるだけでロボットが動く! ホンダが新技術
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090331/biz0903312352034-n1.htm
《ホンダは31日、島津製作所などと共同で、人間が頭の中で考えるだけで、ロボットを動かす新技術を開発したと発表した。現時点では基礎研究レベルだが、「より人に優しい製品開発へ応用することを目指したい」(ホンダ)としている。
 頭皮上の電位変化を計測する脳波計と、脳血流の変化を計測する近赤外光脳計測装置を併用することで、脳の活動によって生じる微弱な電流と血液の変化をキャッチし、思い浮かべたイメージをロボットに伝える。
 システムの性能については、ホンダが開発した二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」を使って実験した。「右手」「左手」など4つの部位で実施したところ、正答率は90.6%だった。頭の中でイメージしてから実際にロボットが部位を動かすのに7〜9秒ほどかかった。
 将来はリモコンを使わずに念じるだけで「お手伝いするロボット」技術などへの応用を考えている。》

▼脳でロボット操作 脳波・血流を把握 ホンダなど新技術
http://www.asahi.com/science/update/0331/TKY200903310318.html
《頭で考えたイメージどおりにロボットを動かす新技術を、日本の研究チームが開発した。脳波と脳血流のデータを解析することで、装置を使う人の意思を把握する。「右手を挙げる」「足を動かす」など4種類の動作について、9割の正答率で人間型ロボット「アシモ」に再現させることに成功した。
 両手に荷物を抱えていても念じるだけで車のドアやトランクが開いたり、炊事で手が離せないときに家事ロボットに配膳(はいぜん)してもらったり――。まだ先だが、そんな技術につなげたいという。
 ホンダ子会社のホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(埼玉県和光市)、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)、島津製作所京都市)の共同研究チームが開発した。装置を使う人はヘルメット型のセンサーを頭にかぶる。体は動かさず、ロボットにさせたい動作を頭の中で念ずるだけだ。
 人がものを考えるとき、脳では微弱な電流や血流の変化が起きる。そこで、研究チームは脳の血流変化を近赤外線を使って計測する装置と、脳の活動によって生じる電気信号を測定する脳波計のデータを組み合わせて解析。その結果を手足を動かす電気信号に変え、無線でとばして「アシモ」を動かした。
 今回の技術は将来、「暑いと感じただけで部屋を涼しくしてくれるエアコン」などの開発にもつながるという。ただ、装置は約300キロの重さがある。研究チームは「小型化を進めるとともに、判別できる動作の種類をさらに増やしたい」としている。》

▼念じればロボット動く ホンダなどが技術開発
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090331AT3K3100831032009.html
《ホンダは31日、島津製作所などと共同で、人が頭で思い描くだけでロボットを操作できる技術を開発したと発表した。脳波と脳の血流の変化から、手や足を動かすことをイメージした時の脳の「指令」を瞬時に読み取るのに成功したという。今回の実験では、その指令に基づいて人型ロボット「ASIMO(アシモ)」を動かしたとしている。
 計測機器を仕込んだヘルメットをかぶった被験者に「右手」「左手」「足」「舌」のうちひとつを動かすことを想像してもらい、それを90%以上の正答率で読み取った。脳波と脳の血流の複雑なデータを統計処理して情報を抽出する技術を開発したことで、これが可能になったという。
 実験は、ホンダの研究開発子会社であるホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(埼玉県和光市)、島津製作所、国際電気通信基礎技術研究所(京都府精華町)の3社で実施した。ホンダは、研究をさらに進め、手を使わずに操作できて生活に役立つ機器の開発などに応用していく考えだ。》

▼「人が考えASIMOが動く」−ホンダ、ATR島津製作所、新BMI技術を開発
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/03/31/1692.html
《……頭皮上の電位変化を計測する「脳波計(EEG)」と、脳血流の変化を計測する「近赤外光脳計測装置(NIRS)」の2つの手法を世界で初めて併用して脳の活動を同時計測。かつ、計測した情報を統計処理して抽出する技術を新規に開発し、使用することで、考えるだけでロボットを制御できる「ブレイン・マシーン・インターフェイス(BMI)」技術を開発したというもの。「将来的には、知能化技術やロボット技術などとの融合による、より人に優しい製品開発への応用を目指す」という。
 具体的にはユーザーが頭部にセンサーを装着後、「右手」「左手」「足」「舌」の4つの選択肢から1つを選んで、その刺激を使用者に提示する。使用者は体を動かさずにその身体各部の運動イメージを7秒〜9秒間程度、頭に思い浮かべる。そしてその際の脳活動を2つの手法で計測する。データはリアルタイムに解析され、使用者のイメージを判別する。処理結果を受け取ったロボット(ASIMO)が手や足を上げる動作を行なうといったもの。実験では 90.6%の正答率を示し、これはホンダとATRによれば世界最高水準だという。なお他の機関では同様の4択実験では66%程度であり、一般的には3択や 2択を使うことが多いという。
 ……BMIは脳から信号を取り出し、その信号をもとに機械を制御することで人体の機能を補綴する技術である。非侵襲で脳を計測する技術には、 fMRI、脳磁図などの方法があるが、これらの手法では計測機器が重く、また被験者を固定する必要がある。軽量な技術としてはEEGやNIRSがある。両者にはそれぞれ時間分解能、位置分解能において逆の長所短所がある。EEGは時間分解能は高いが位置の分解能は低い。NIRSは位置の分解能はあるが時間分解能が低い。今回のシステムでは両者を組み合わせることで、高解像度で高時間分解能のシステムとし、信号の読み取り精度を向上させた。将来は携帯も可能なシステムにすることも視野に入れるという。また川人氏は「BMI脳科学を革命的に進歩させる新しい研究手段でもある」と述べた。
 ……今回の研究担当者であるホンダ・リサーチ・インスティチュートシニアサイエンティストの岡部達哉氏は、BMI技術を使った将来イメージから今回の技術を紹介した。たとえば洗い物をしているときにロボットが思考を読み取って家事をやってくれたり、声に出さずにイメージを伝えられたり検索ができたり、両手がふさがっているときに車のリアゲートを開けることができたりするのであれば、活かせるシーンはたくさんある。今回の研究はこのような夢を現実にするための第一歩だと述べた。
 ……今回の計測機器では、EEGが64チャンネル、NIRSが48チャンネルある。実際に脳のどの部位を計測しているのかについては明かされなかった。計測機器全体の小型化や無線化の可能性については、株式会社島津製作所取締役の吉田多見男氏が「工夫の余地はあると思っている」と述べるに留まった。
 右手、左手、足、舌という刺激はよくBMIの実験で使われるもので、被験者は、それぞれの身体部位の視覚イメージを浮かべるのではなく、それぞれの部位を連続的に動かすようなイメージを思い浮かべる。そのイメージは人によって異なり、たとえば「足」だと駆け足、「左手」の場合は車のシフトレバーを動かしているようなイメージを思い浮かべる被験者もいれば、「舌」の場合はアイスクリームを舐めるようなイメージを思い浮かべる人もいるそうだ。被験者それぞれが思い浮かべやすく、かつ、正答率が高い運動イメージを思い浮かべることになる。
 事前のデータ蓄積に必要な時間は2時間程度。脳の形や活動状態が異なるため、判別しやすい人とそうではない人の個人差はあるという。現在までの被験者は3名。1日100回程度の試行を行ない、数カ月間、実験を行なっているそうだ。また「スパース・ロジスティック・リグレッション」については、他にも遺伝子解析などにも使える可能性があるという。記者会見では、多くの質問が飛び交った。》