大山鳴動――2009年04月05日

▼【北ミサイル】発射誤情報…無関係な航跡発端 伝達の迅速さと正確さの両立課題
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090405/plc0904050039001-n1.htm
《4日に起きた弾道ミサイル発射の誤情報問題の発端は、航空自衛隊のレーダーが探知したミサイルとは無関係の航跡情報が、即座に首相官邸まで伝達されたことだった。その過程で、隊員が発射の根拠を肉付けする情報を思い込みで加えたり、衛星情報との照合が不十分だったりしたミスも重なった。情報伝達の迅速さと正確さの両立という重い課題を浮き彫りにした形だが、速報重視に伴う弊害との見方もある。
 一般的に弾道ミサイルの探知の流れはこうだ。ミサイルの発射時に放出される赤外線を米軍の早期警戒衛星が探知。その情報に基づき、自衛隊の地上レーダーとイージス艦のレーダーが探知・追尾−。
 今回、米軍の早期警戒衛星からは何も情報がなかった。誤情報の元になったのは、空自が防衛省技術研究本部飯岡支所(千葉県旭市)で運用している新型地上レーダー「FPS−5」が探知した航跡。このレーダーは高性能で、低い高度を周回する衛星などの航跡も捕捉してしまう。
 「スパークインフォメーション」。ミサイルを探知したときに使う言葉で、飯岡から防空指揮群(東京都府中市)を経て航空総隊司令部(同)に伝えられた。総隊司令官はミサイル防衛(MD)システムでの迎撃オペレーションをつかさどる統合任務部隊指揮官を務める。
 「飯岡探知」「SEW入感」。SEWは早期警戒衛星情報のことを指す。防空指揮群から連絡を受けた総隊司令部の隊員は、思い込みで早期警戒衛星もミサイル発射を探知したと付け加え、別の隊員に伝えた。
 12時16分、防衛省地下にある中央指揮所に「飯岡探知」「SEW入感」と伝達された。「発射」。内局運用企画局の担当者は2つの言葉を踏まえ、ミサイル発射をアナウンス。音声の内容は官邸の危機管理センターにも伝わり、緊急情報ネットワークシステム「Em−Net(エムネット)」で自治体などに拡散した。
 「総隊司令部の隊員の思い込みや、衛星の航跡情報を中央指揮所のモニター画面で照合しなかったことに批判は免れない」(防衛省幹部)。ただ、米側からの衛星情報の伝達が遅れる可能性もあり、FPS−5の探知だけでも発射情報として官邸まで伝えることは想定されたケースだった。
 「誤探知」。発射情報が入ってから4分後、官邸に訂正が伝えられたが、すでに誤情報はエムネットで送信されていた。「防衛省としては複数の情報で確認したいが、速報重視で情報をそのまま上げろと官邸に強く指示されていた。誤情報もあり得ると事前に説明しておくべきだった」(同)との指摘もある。》

▼【北ミサイル】 崩れたシナリオ 誤報に振り回された首相官邸
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090405/plc0904050012000-n1.htm
《すべてはシナリオ通りに進むかと思われていた。
 3日夜に外遊先のロンドンから帰国したばかりの麻生太郎首相は4日午前8時半から桜が満開となった国会周辺を約40分間かけてウオーキングし、「普段通りの朝」を演出した。
 だが、公邸にはすでに首相秘書官らが待機していた。首相はニヤッと笑ってソファに座り、北朝鮮のミサイル発射準備状況について報告を受け、発射後の対応について最終的な打ち合わせをした。
 想定では、首相は公邸で待機し、ミサイル発射の一報が入れば、速やかに(1)日本領域の安全確認と航空機、船舶の安全確認(2)情報収集態勢の強化(3)国民への迅速な情報提供−と3つの指示を出し、首相官邸地下の危機管理センターに移動。官邸のエントランスで記者団の取材に応じ、国民に安心を訴えるメッセージを発する手はずだった。
 午前10時。朝鮮中央通信が「運搬ロケット『銀河2号』の打ち上げ準備が完了し、まもなく打ち上げる」と報じた。日本で「まもなく」と言えば1時間以内を指す。官邸は緊迫した空気に包まれた。
 午後零時16分、官邸1階の報道室がどよめいた。
 「北朝鮮のミサイルが発射されました!」
 吉牟田剛報道室長が声を上ずらせ、「先ほど北朝鮮から飛翔体が発射されたもようです。テレビ、ラジオ等の情報に注意してください。続報が入り次第お知らせします」と書かれたプレスリリースを詰めかけた記者に配布。各自治体にも緊急情報ネットワークシステム「Em−Net(エムネット)」で同様の文面が一斉送信された。
 首相も予定通り公邸を出て官邸に向かった。
 この直後だった。「誤探知でした!」。首相は秘書官の言葉に耳を疑ったが、いまさら公邸に引き返すわけにはいかない。首相は官邸エントランスに詰めかけた記者団とは目も合わせず、危機管理センターに入った。「あと1分連絡が遅ければ首相は誤報を元にカメラの前に立ち、世界中に赤っ恥をかくところだった」。政府高官はそう言って胸をなで下ろした。
 「発射」公表から全面撤回まで約5分。なぜこのような失態を演じることになってしまったのか。 原因は航空自衛隊が新型地上レーダー「FPS−5」(千葉県旭市)がとらえた航跡探知情報をミサイルが発射されたものと解釈し、首相官邸に伝えたためだ。浜田靖一防衛相は河村建夫官房長官に「すべて防衛省の責任です。明日(5日)以降万全を期すようにします」と陳謝し、テレビカメラの前でも「国民に大変なご迷惑をおかけし、心からおわびを申し上げたい」と涙目でわびた。
 だが、ある政府高官はこう打ち明ける。
 「ミサイルが発射されれば、日本に落下したり上空を通過するのに10分間もかからない。情報の確度を上げようとすれば、公表はミサイル着弾後になる。まさに薄氷を踏むような決断の連続なんだ…」
 首相も誤報と知った直後はさすがに不機嫌だったが、慌てふためく防衛省幹部の様子に同情したのか、次第に矛を収めていった。4日中のミサイル発射の可能性がほぼ消えたことを確認すると首相は河村氏に穏やかな声でこう言った。
 「まあ、明日も変わらずしっかりやってくれ!」》

▼【北ミサイル】日本の誤情報、世界を走る ロイター、新華社など速報
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090404/biz0904042352015-n1.htm
《主要な海外メディアは4日、北朝鮮から長距離弾道ミサイルとみられる「飛翔(ひしょう)体が発射されたもよう」との日本政府発表の誤情報に基づき、北朝鮮が「ロケットを発射した」と世界に向け速報し、間もなく訂正した。
 英ロイター通信は、日本政府が同日午後零時16分に発表した直後に速報。約5分後「日本政府によると発射情報は誤り」と訂正した。
 韓国の聯合ニュースは、日本メディアの速報を引用して「北朝鮮が長距離ロケットを発射」と報道したが、約10分後に「間違いだった」と伝えた。中国の国営通信、新華社も発射を速報し、約6分後に訂正した。》

▼【北ミサイル】エムネット正常機能も…自治体ドタバタ
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090404/plc0904042349040-n1.htm
《列島の緊張感を一気に高めた「誤探知」の報は、緊急情報ネットワークシステム「Em−Net(エムネット)」で、全国の自治体へ送信された。わずか5分で「発射」から「誤り」にひっくり返った知らせに、担当部署は混乱。情報を一斉に送る機能に問題はなかったが、今回の事態に備えて、あわてて加入した市町村は肩すかしを食った格好となった。
 エムネットは、官邸の担当者がホストコンピューターから情報を送信すると、各自治体に置かれたパソコンがメッセージを受け取り、担当者が内容を把握する仕組みだ。内閣官房では「1分以内の送受信」を目指し、3日と4日に訓練を実施した。
 内閣官房から、エムネットで“第一報”が送られたのは、午後0時16分。「先ほど、北朝鮮から飛翔体が発射された模様です。テレビ、ラジオ等の情報に注意してください」というメールが一斉に送信された。各自治体は、おおむね同17分までに受信したとみられる。その後、内閣官房が「先ほどの発射情報は誤探知です」との訂正を送ったのは、同20分ごろ。1分以内に自治体の端末が受け取ったもようだ。
 約5分間で一転した情報によって、自治体は混乱に陥った。
 岩手県八幡平市は、エムネットの情報から30秒後に、あらかじめ録音してあった音声を防災無線で流し、市民に一報を伝えた。ところが「訂正」のアナウンスを用意していなかったことから担当部署はパニックとなり、職員があわてながら“アドリブ”で誤報だったことを伝えた。「さすがに誤報まで想定していませんでした」と同市担当者は苦笑する。
 秋田市は、担当者がホームページに情報をアップした直後に削除するなど、振り回された。担当者は「情報はしっかりしてほしい。(エムネットは)今後も信じるしかない」と、ぐったりした様子で話した。
 伝達速度の課題はクリアできたが、自治体関係者には精度への不満が残ったかっこうだ。危機管理に詳しい群馬大大学院の片田敏孝教授(災害社会工学)は「スピードと精度の完全な両立は難しい」としたうえで、「切迫した状況では、まず情報を流すことが求められる。今回の誤報で発信者が萎縮(いしゆく)し、速報性の確保に支障を来すことになると困る」と話している。》

▼【北ミサイル】マスコミも肩すかしで混乱
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090404/biz0904042229014-n1.htm
《民放などマスコミ各社は4日早朝から、ミサイル発射の速報に備え、北朝鮮や日本各地の迎撃態勢の動向を伝えたり、「ふだんどおりの生活を心がけてください」などと国民に平静を呼び掛ける“厳戒態勢”を敷いた。
 政府が正午すぎに発表した「飛翔体(ひしようたい)発射」の一報と同時に、各テレビ局とも放送中の番組を一時中断、特番に切り替えたりテロップを流すなど緊急対応。しかし、約5分後に「誤報」と分かると、身を乗り出してスタジオで解説を始めていた記者や、コメンテーターは肩すかしをくったかっこうとなり、緊張とあいまって表情を曇らせた。
 民放の特番に出演していた軍事評論家はいらだった表情で、「訂正に5分もかかっているようでは、速報システムに問題があるのではないか」などと声をあげ、思わず政府の対応に批判のほこ先を向ける場面もみられた。
 NHKでは、午後0時15分から20分のローカルニュースの時間帯に一報が飛び込んだ。カメラが特番のスタジオに切り替わると、緊張した表情のアナウンサーがニュースを読み、政治部記者が解説し始めた直後に「誤探知」が伝えられ、アナウンサーが訂正した。
 フジテレビは、土曜の昼過ぎのレギュラー番組を一時中断。約40分にわたり軍事の専門家らが出演する報道特別番組を放送した。
 一方、この日は桜の満開の時期と重なり、行楽日和となった各地では、外出先から市民らが、いっせいに携帯電話などでインターネットにアクセスした。
 MSN産経では、「飛翔体発射」の一報が流れた、午後0時17分前後のアクセス数は、それ以前のアクセス数より2割増となり、一般市民の関心の高さがうかがわれた。》

北朝鮮「ミサイル」発射通告期間 4日は発射されず 政府、5日も引き続き警戒
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00152461.html
《ミサイル発射通告期間初日の4日、北朝鮮は「人工衛星をまもなく打ち上げる」との声明を出したが、発射は行われなかった。日本政府は、5日も引き続き警戒を続けることにしている。
4日午後5時すぎ、朝鮮中央テレビは「試験通信衛星光明星2号』を運搬ロケット『銀河2号』で打ち上げ準備が完了した。衛星はまもなく発射される」と報じた。
中曽根外相は「ずっと、われわれとしては、自制を求めてきたんですから、このまま発射されないことが1番いいんですが」と述べた。
河村官房長官は「あす(5日)以降ございますから、引き続いて緊張感を持って対応していかなきゃいかんと」と述べた。
北朝鮮が、8日までの午前11時〜午後4時の間に打ち上げることを予告したため、政府は、日本の領域への落下物の可能性について「(可能性は)極めて低い」としながらも、迎撃態勢を整えるなど警戒に入った。
一時、誤ってミサイル発射情報が流れ、麻生首相が官邸入りしたが、その直前に誤りが判明し、それ以降も発射がなかったため、終始、記者団には無言だった。
自民党細田幹事長は「(原因は)気象情報等ですね、強風というようなこともあるし、機材の不具合とかいろんな要素が考えられるけれど」と述べた。
政府関係者は、事前に4日発射の兆候があったことを示唆する一方、見送りについて「何か特別な理由があったのだろう」と述べた。
政府では、5日も4日同様の警戒態勢を続ける。》