信じがたいほど縮小する日本経済

▼信じがたいほど縮小する日本経済
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/866
《「失われた10年」は、1度であれば不運と見なされるかもしれない。それが2度となると、不注意に思える。
 ……2008年10〜12月期に年率換算で12%落ち込んだ実質GDP国内総生産)は、今年1〜3月期にはそれ以上のスピードで縮小した可能性がある。経済協力開発機構OECD)は、日本のGDPが2009年通年で6.6%収縮し、過去5年間の回復期における経済拡大をすべて帳消しにすると予想している。
 ……今年1〜3月期の名目GDPは、デフレの影響もあって、恐らく1993年当時の水準まで後退したと見られる。事実上、日本経済は16年間も全く成長していないわけだ。
 ……日本が輸出に依存しすぎているというのが一般な見方だが、現実はそれより少々複雑だ。
 日本のGDPに占める輸出の割合は、ドイツや中国よりずっと小さく、つい最近まで米国と同水準だった。2001年までの10年間、純輸出は日本のGDP成長率に全く貢献してこなかった。
 それ以降は輸出が確かに急増し、11%程度だったGDPに占める輸出比率は昨年17%に急上昇した。輸出企業の設備投資を合わせると、純輸出は2007年までの5年間のGDP成長の半分近くを担ったことになる。
 輸出は大幅な円安と米国の消費熱を背景に活況を呈した。日本では住宅バブルも信用バブルも起きなかったが、円安は別の類のバブルを引き起こした。日本の輸出企業が、円安が続き、世界需要の堅調さも続くと信じて生産能力を拡大した結果、経営資源の配分を大きく誤ってしまったのである。

 昨年、海外需要が崩壊して円が急騰すると、日本の輸出「バブル」は弾けた。輸出総額は過去1年間で半分近く落ち込んだ。自動車や家電製品などの日本の高価値製品は、不況になると、人々が真っ先に買い控える商品だ。
 ……残念ながら、日本経済は再びぐらつく可能性が高い。企業利益の減少と失業率の上昇の2次的効果で、投資と消費支出が圧迫されるからだ。最新の日銀短観によれば、3月の大手製造業の景況感は1974年の調査開始以来、最悪となった。製造業者は今年、投資を20%削減する計画だ。
 企業は雇用と賃金も削減している。4.4%という一見大したことのない2月の失業率は、実際の痛みを過小評価している。2008年初めに1.0倍前後だった有効求人倍率はわずか0.59倍にまで低下し、平均労働時間も急激に減少した。2月の平均収入(ボーナスと残業代を含む現金給与総額)も前年比2.7%減少した。

 ……2008年10〜12期にGDPギャップは既にGDPの4%まで拡大しており、2009年末に向けて10%に近づいていく見通しだ。これは1990年代の景気低迷期の2倍の水準だ(前ページの図、下のチャート参照)。
 ぽっかり空いたこの経済の穴は、今再び、物価に下落圧力をかけている。夏の終わりまでに消費者物価は1年前に比べて2%以上下落しているかもしれない。これは日本の前回のデフレ時よりも速いペースでの物価の落ち込みだ。

 ……日銀は国債買い取りも拡大したが、2001〜2006年の経験から、そうした「量的緩和」がインフレ期待値を上昇させ、需要を刺激できるかどうか懐疑的だ。
 1つの大きな違いは、前回の量的緩和は当時の首相、小泉純一郎氏の下で行われた厳しい財政引き締めの時期と重なっていた点だ。2002年にGDPの8%だった財政赤字は2006年には1.4%まで減少した(それが国内需要が弱かった一因だ)。財政の拡大と日銀による国債購入の組み合わせは、もっとうまくいくはずである。

 ……OECDは、日本の公的部門の負債が2010年にGDPの200%に近づくと予想しており、さらなる財政出動は制限されるだろう。日本は将来の成長を輸入に頼ることもできない。日本が輸出バブルに沸いた頃の水準まで、外需が盛り返すことはない。日本は内需を拡大しなければならないのだ。

 ……理論的には、贈与税の減額は、ほかのどんな財政刺激策よりも経済効果が大きい可能性がある。
 ……日本の2度目の失われた10年は、ほかの先進国に憂慮すべき教訓を提示している。日本の巨額財政出動は、バブル崩壊後の1990年代に不景気が恐慌に発展するのを食い止めることに成功した。ほかの国々がそれに倣うことは、もちろん間違っていない。
 しかし、それから10年経っても、日本が力強い国内景気の回復を遂げられなかったという事実は、米国と欧州の行く手にも、長く険しい道のりが待ち受けていることを暗示している。》


The Economist
The incredible shrinking economy
http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=13415153