西松建設を巡る疑惑 まとめ Vol.12

▼岩永元農水相の政治資金問題、3千万円分は3月で時効に
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200903040090.html
《元農水相岩永峯一衆院議員(67)=自民、滋賀4区=側が宗教法人「神慈秀明会」(滋賀県甲賀市)から計6千万円を受け取りながら政治資金収支報告書に寄付として記載していなかった問題で、3千万円の授受があった03年分の収支報告書の提出から今月1日で5年が経過し、処理が違法であっても政治資金規正法違反罪の公訴時効を迎えていたことがわかった。05年分の提出からはまだ5年は経過していない。
 秀明会は03年と05年に、岩永氏の事務所担当者に小切手で各3千万円を渡し、引き換えに岩永氏が代表だった「自民党滋賀県第4選挙区支部」(党第4支部)名義の領収書を受け取った。秀明会は一貫して「寄付だった」と主張しているが、岩永氏側が滋賀県選管に提出した党第4支部の03年分の収支報告書には、秀明会からの寄付は記載されなかった。
 同法の虚偽記載などの罪の公訴時効は報告書の提出から5年で、03年分は04年3月1日に提出されていたことから、今月1日に時効が成立した。05年分の収支報告書は06年2月27日に提出されており、11年の同日で満5年となる。
 一連の問題では、滋賀県警が昨年5月、旧信楽町(現・滋賀県甲賀市)の汚職事件の関係先として秀明会本部を家宅捜索した際に、党第4支部名義の領収書を見つけ、任意提出を受けた。県警は、03年分の3千万円は岩永氏の長男が代表だった「岩永みねいち君を励ます会」の口座へ、05年分は党第4支部の口座へそれぞれ入金されていたことを確認したが、捜査はその後具体的な動きを見せていない。
 政治資金規正法上、「励ます会」は企業や団体から献金を受けることはできず、03年分の収支報告書(04年3月26日提出)にも寄付の記載はなかった。
 岩永氏はこれまで、事務所担当者個人が秀明会から無利子で6千万円を借り入れ、党第4支部や関連政治団体に党費や会費として納めた、と説明している。3日に自民党滋賀県連の会長を退任した際に明らかにしたコメントでは「政治献金は適法に扱ってきた」と主張している。》

献金捜査、自民に波及せずと高官 異例の言及
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009030501000792.html
《政府高官は5日、西松建設の巨額献金事件の捜査について「自民党議員に波及する可能性はないと思う」との認識を示した。政府高官が政治家の絡む事件で捜査の見通しに言及するのは異例。捜査の中立、公正を確保する観点から批判も予想され、波紋を広げそうだ。
 西松建設側の献金やパーティー券購入など資金提供先には、自民党森喜朗元首相や二階俊博経済産業相、加納時男国土交通副大臣山口俊一首相補佐官らが含まれている。高官は「あの金額で違法性の認識を出すのは難しい。請求書でもあれば傍証の1つになるが、それだけで立件はないと思う」と述べた。》

▼小沢氏秘書、下請け迂回献金も認識 西松側に入金催促
http://www.asahi.com/national/update/0305/TKY200903050174.html
民主党の小沢代表の資金管理団体陸山会」をめぐる違法献金事件で、準大手ゼネコン「西松建設」が、社名を出さずに迂回(うかい)献金する手口の一つとして、下請け業者に工事代金を水増しして支払い、水増し分を同代表の政党支部献金させていたことが、関係者の話でわかった。
 同代表の公設第1秘書と陸山会の会計責任者を兼ねる大久保隆規(たかのり)容疑者(47)=政治資金規正法違反容疑で逮捕=は、下請け業者からの献金西松建設の資金と認識しており、入金がないと西松建設側に催促していたという。下請け業者分を含む献金は95〜06年で総額約1億8千万円に上る。東京地検特捜部は5日に大久保秘書の自宅を捜索し、全容解明を進めている。
 西松建設から小沢代表側への迂回献金ルートはこれまでに、同社のOBが代表を務めていたダミーの政治団体新政治問題研究会」と「未来産業研究会」から陸山会、政党支部▽子会社「松栄不動産」などから政党支部――の2ルートが判明している。
 大久保秘書は、実際は西松建設からの政治献金であることを知りながら、03〜06年分の陸山会政治資金収支報告書に、ダミーの2団体から計2100万円の寄付を受けたとする虚偽の記載をしたとして、3日に政治資金規正法違反容疑で逮捕された。
 関係者によると、新たにわかった3ルート目の下請け業者経由の献金では、西松建設が、特定の下請け業者数十社が加入した組織を統括。これらの下請け業者に工事費の水増し分を、企業献金が許される政党支部献金するよう指示していたという。
 3ルートに分けたのは、1ルートの献金額が突出して、小沢代表側との密接な関係が目立つことがないように配慮したためとみられている。
西松建設は95年ごろから3ルートでの献金を始めたが、大久保秘書は00年ごろから、先輩秘書から引き継いで西松建設との交渉役になった。毎年、同社の総務部長だった岡崎彰文容疑者(67)=政治資金規正法違反容疑で逮捕=と、同社から小沢代表側への献金額について相談。年2500万円の中で3ルートの金額配分を決めたうえ、陸山会と政党支部に割り振っていた。下請け業者からの入金が遅れると、西松建設側にクレームをつけていたという。
 献金額は数年前から同社の資金繰りが悪化したため減額されたが、06年中に献金をやめるまで約10年間の総額は約1億8千万円に達した。
 西松建設は、東北地方のダムなど大規模公共工事の受注で便宜を図ってもらうことを期待して、小沢代表側への献金を続けていたという。》

▼【関連】選挙の顔 一転窮地 『窓口役』が突然 聴取に憔悴、検察動く
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009030402000054.html
《「検察の陰謀か」「選挙はどうなる」−。準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)の脱法献金疑惑は三日、小沢一郎民主党代表の資金管理団体政治資金規正法違反事件に発展した。総選挙間近、小沢総理誕生ともささやかれる中で、東京地検特捜部は、建設業界に大きな影響力を持つ代表の公設秘書逮捕に踏み切った。民主党議員は「国策捜査」と検察を批判、自民党議員は「民主党は国民を裏切った」と話した。 
 検察関係者によると、小沢代表の第一公設秘書、大久保隆規容疑者(47)はここ数日、任意で特捜部の事情聴取を受けていた。精神状態が次第に不安定になっていたという。
 西松建設の捜査では先月二十四日夕、長野県の村井仁知事の衆院議員時代の公設秘書だった県総務部参事の右近謙一さん(59)が聴取を受けた後に自殺していた。憔悴(しょうすい)していた大久保容疑者も自殺の恐れが出てきたために逮捕する方針が二日夜に固まったという。
 民主党にはそれだけに突然の逮捕。党本部での幹部会で小沢代表が秘書の逮捕容疑を否定しても議員には驚きと戸惑いが広がった。小沢代表は逮捕が報じられる前の午後四時すぎ、マスク姿で無言のまま車に乗り込んだ。
 川内博史衆院議員は「小沢さんほど法令に従って処理する原理原則を重んじる人はいないはずだが…」。
 事務所で事件を報じるニュース番組を見ていた中堅議員は「ダメージだ。なぜこんなことになるんだ」。ある参院議員は「代表自ら全国行脚をして地方組織にねじを巻いていたが、『おまえこそしっかりしろ』だ。代表交代もあるのではないか」と憤った。
 一方、自民党本部には多くの報道陣が集まったが、党所属議員らが時折出入りする程度。武部勤元幹事長は「政治家の良心が問われる問題。政治全体が国民の信頼を失っていることは、日本にとって深刻だ。与党の側も信頼を失っているが、民主党も国民に対する背信行為だ」と厳しい口調で語った。
 エレベーターから出てきた小池百合子元防衛相は「中身をよく知らない」と言って足早に車に乗り込んだ。
 平沢勝栄衆院議員は「これからという時に民主党はいつも『ホップ、ステップ、肉離れ』になる」と指摘。ただ、「敵失を利用するのは邪道だ。政治不信を一掃するのが先決だ」と語った。
 自民党時代に幹事長を務めた小沢代表は、建設業界に君臨した田中角栄元首相や建設族のドンと呼ばれた金丸信・元自民党副総裁の腹心として、建設業界に大きな影響力を持ち続けてきた。一九九三年の自民党離党後も、野党でありながら抜群の資金力を誇った。
 「小沢さんが業界で一目置かれるようになったのは、自民党時代に日米建設協議をまとめたのがきっかけ」
 あるゼネコンの元役員はそう振り返る。八七年に竹下内閣の官房副長官に就任した小沢氏は、建設相でないにもかかわらず、建設市場開放を迫る米国を訪問。難航していた協議を一気にまとめて評判になった。
 幹事長として仕切った九〇年の総選挙ではリクルート事件の逆風の中、建設・電力業界など経済団体連合会(当時)傘下の企業から三百億円を集めて勝利し、「剛腕」と呼ばれるようになった。
 地元の岩手県では、有力建設業者やゼネコン各社の営業所などを中心に集票・集金力を誇り、自民党離党後も選挙のたびに建設業界はこぞって支援した。あるゼネコンの元営業所幹部はかつて「岩手県内の大型工事には小沢事務所の影響力が働いている」と話した。
 離合集散で陰りがみえた影響力は民主党への合流で復活。代表になってからはかつて自民党の票田だった建設業界や旧特定郵便局長会と接近する一方、中央の「陸山会」と地元の民主党支部を中心に多数の団体・企業から資金を集め、毎年数億円の資金力を誇った。
 二〇〇七年には陸山会の四億円を超す事務所費や、小沢代表の個人名義で多数の不動産を所有していることが批判された。小沢代表は記者会見で「事務所費は秘書宿舎の建設費用。個人名義の不動産は陸山会の財産であり問題はない」と釈明したが世間には、自民党時代と変わらぬ集金力を印象づけた。》