西松建設を巡る疑惑 まとめ Vol.36

西松建設裏金:前社長に禁固1年6月求刑 判決7月14日
http://mainichi.jp/select/jiken/nishimatuuragane/news/20090619org00m040997000c.html
政治資金規正法(第三者名義の寄付禁止など)違反と外為法違反に問われた準大手ゼネコン「西松建設」の前社長、国沢幹雄被告(70)の公判は19日午後も東京地裁(山口雅高裁判長)で続き、検察側は「規正法の趣旨を踏みにじり極めて悪質」と禁固1年6月を求刑した。弁護側は「背景事情を過大視して贈収賄と同列に扱うことは許されない」と反論した。公判は結審した。判決は7月14日。
 外為法違反に問われた元副社長、藤巻恵次被告(68)には、懲役6月が求刑された。
 検察側は論告で、西松側から民主党小沢一郎前代表(現・代表代行)側への献金が95〜06年で2億円を超え、うち二つのダミー政治団体を通じた分は1億2900万円に上ったと指摘。「献金の主体を偽り、小沢事務所から『天の声』を得て公共工事を受注してきた談合の構造・実態を隠ぺいした。献金そのものを収支報告書に記載しない『闇献金』と何ら異ならない」と非難した。
 国沢被告の弁護側は最終弁論で、実質的に西松からの献金だったことを認めつつ「収支報告書の金額は正確に報告されている」と主張。ダミー団体を使った背景として「ゼネコン業界内に『政治献金すると癒着を指摘される』との空気があった。他社もやっているという認識の下、献金は競争に打ち勝つためだった」と情状を訴え執行猶予を求めた。国沢被告は被告人質問や最終陳述で「法違反に対する意識が希薄だった。深く反省している。お騒がせして申し訳ない」と謝罪した。
 一方、政治資金規正法違反で起訴された小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規被告(48)の弁護人は19日、「検察官は自民党関係の団体が献金を受けた実態を明らかにせず、大久保氏を狙い撃ちにしたのは明らか」との所感を発表した。また、検察側が法廷で「2団体からの献金が実際は西松建設からの献金と知っていた」との大久保被告の供述調書を朗読したことについて、弁護人は毎日新聞の取材に「自白したかのような理解は間違い。起訴内容を全面的に争っていく基本方針は変わらない」とコメントした。》

西松建設裏金:小沢事務所が「天の声」 前社長初公判
http://mainichi.jp/select/jiken/nishimatuuragane/news/20090619org00m040999000c.html
《準大手ゼネコン「西松建設」を巡る事件で、政治資金規正法違反と外為法違反に問われた前社長、国沢幹雄被告(70)は19日、東京地裁(山口雅高裁判長)の初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は冒頭陳述で、西松が95年以降、民主党小沢一郎前代表(現・代表代行)側に多額の献金をし、小沢事務所から「天の声」を得て、岩手・秋田両県で4件(落札額計122億7000万円)の公共工事共同企業体(JV)で受注したと指摘した。

 ◇起訴内容認め7月にも判決
 検察側は、97〜04年に西松側から小沢氏側に年間2500万円を献金する枠組みが設けられていたなどとも主張した。これによると、95〜06年の献金総額は約2億6000万円と推計される。
 併合審理された元副社長、藤巻恵次被告(68)も外為法違反の起訴内容を認めた。即日結審し7月にも判決が言い渡される見通し。一方、政治資金規正法違反で起訴された小沢前代表の公設第1秘書、大久保隆規被告(48)の初公判は秋にも開かれ、全面的に争う方針を固めている。
 検察側は冒頭陳述で、95年施行の改正政治資金規正法献金者の公開対象が100万円超から5万円超に大幅に引き下げられたため、国沢被告が当時の社長に対処を指示され、ダミー政治団体を設立したと指摘。一方、岩手県秋田県公共工事では、ゼネコン各社の談合による本命業者選定に、小沢事務所の意向が影響力を及ぼしていたと主張。国沢被告は95年から1000万円超の献金を始めたと指摘。97年以降は小沢事務所の示唆で、西松建設から1500万円、下請け業者を通じ1000万円の年間計2500万円を献金すると申し合わせたとした。00年ごろからは大久保被告が献金を巡る交渉や、「天の声」を出す業務を担当。献金名義や額の割り振り案を記した一覧表を西松側に提示するなどしたと述べた。
 検察側は法廷で、談合仕切り役の鹿島の担当者が「(岩手県の工事は)西松でよろしいですかと尋ねると、大久保被告が『結構です』と応じた」と証言したり、西松幹部が「大久保被告に『西松にしてやる』と言われた」と話している調書を読み上げた。

 ◇「西松からと認識」調書で大久保被告
 検察側は大久保被告が「2団体からの献金が実際は西松建設からの献金と知っていました」と供述している調書を朗読した。証拠の概要を読み上げる「要旨の告知」と呼ばれる手続きで、政治資金規正法違反容疑を認めたとも評価できる内容。
 調書によると、西松建設の部長が06年「今まで小沢先生を支援してきたけど、もう限界です。献金を打ち切らせてください」と切り出した。大久保被告は「経営が厳しいと認識しておりましたので『あい分かりました』と了承しました。そのうえで社交辞令として『業績が回復したらまたよろしくお願いします』と伝えた」という。
 大久保被告は「献金が部長の判断ではなく会社として行われ、しかるべき人間の決裁を経て献金を得ていると認識しておりました」とも供述しているという。》

西松建設献金事件:前社長初公判 「手続き間違いない」 県教委が関与否定 /秋田
http://mainichi.jp/area/akita/news/20090620ddlk05040018000c.html
《◇小沢事務所「天の声」 武道館工事
 西松建設を巡る政治資金規正法違反事件で19日に東京地裁であった初公判で、検察側は民主党小沢一郎代表代行の事務所による「天の声」が県内の公共事業でもあったと指摘。発注元の県には戸惑いが広がった。
 検察側が指摘したのは、02年に県が発注した秋田市新屋町の県立武道館の建築工事。一般競争入札に7共同企業体が参加し、西松建設を含む4社の共同企業体が36億5400万円(落札率94・8%)で受注し、04年2月に完成した。
 今回の指摘に対し、武道館建築にかかわった県教委施設整備室の和泉良正室長は「事務手続きに間違いはなかったと思っているが、業者間で何をやっていたかはわからない」として“官製談合”について否定。「指摘通りの情報があれば調査しなければいけないが、今のところ本当なのかわからない」と話した。
 また佐竹敬久知事は「仔細(しさい)を承知する立場になく、現時点では特にコメントのしようがない」との談話を発表した。寺田典城前知事は3月時点で「(受注調整など)預かり知らないこと」と関与を否定している。》

▼’09衆院選:西松献金初公判 「民主に痛手」「信じたい」−−県内に波紋 /岩手
http://mainichi.jp/area/iwate/news/20090620ddlk03010002000c.html
《◇小沢王国、再び揺れる
 西松建設前社長、国沢幹雄被告の初公判で、小沢事務所の「天の声」、不正献金の認識などを指摘する検察の主張に、県内の政界、地元は、さまざまな思いに揺れた。県内では「説明責任を」「民主には痛手」など、批判を口にする政党がある一方、「信じたい」と口を閉じる地元関係者も。さらに、発注工事の談合指摘に、県も落ち着かない。衆院選を控え、「小沢王国」にどのような風を吹かせるのか。【湯浅聖一、岸本桂司、山口圭一、山中章子

 ■地元は…
 公判の最中、奥州市水沢区小沢一郎後援会事務所では、人の出入りもほとんどなく、ひっそりとしていた。留守番をしていた女性職員は「事務所関係者が長期出張でおらず、対応できない」と答えるのみだった。
 後援会水沢連合会の小野寺傳会長は「今の段階では成り行きを見守るしかない」と戸惑いの表情をみせた。そのうえで、「衆院選に影響はあると思うが、小沢先生は法に触れることをしていないと言っているし、信じている。選挙は今まで通り、粛々とやっていくしかない」と話した。
 小沢事務所に献金をしていた地元の建設業者は「対応できる社長や専務が不在なので答えられない」などと沈黙。「(天の声は)聞いたことがない」と話す奥州市内の建設会社社長は「小沢さんは次の選挙で票を減らすねえ、印象が悪いだろう」と心配した。
 一方、釜石市大久保隆規被告の自宅アパートは、出入りする人の姿もなく、家族がドア越しに「こちらから申し上げることは何もありません」と答えるのみだった。近所の女性(73)は、保釈後、大久保被告があいさつ回りに来たといい、「(無実を)信じて応援したい」と話した。

 ■政党は…
 「信じたい。事実と確定したわけでもない」と、民主党県連の佐々木順一幹事長はいら立ちを見せた。衆院選への影響は「有権者が判断することだが、話は出尽くしており、(影響は)ないと思う」と否定する。
 社民、共産両党からは「本当であれば許されない」「小沢氏は国民に事実を明らかにすべきだ」などと批判の声が上がる。さらに、公明党からは「事実が明確になれば、民主への打撃は大きい」と、民主への逆風を期待する声も。
 ただ、岩手4区で小沢氏の元秘書、高橋嘉信氏を擁立する自民党は、やや歯切れの悪さをみせる。県連の千葉伝幹事長は「(高橋氏の)関与は聞いていない。裁判ですべて明らかになればいい影響が出る可能性もある」と述べるにとどめた。高橋氏も「何も言うことはない。おれには関係ないから答えられない」と話した。

 ■県は…
 冒頭陳述では、西松建設が談合のうえ、3事業で94・5〜99・2%の高い落札率で落札したと指摘している。発注した県は「当時としては、落札率は突出した高さでない」(金田学・入札担当課長)と正当性を主張する。さらに、県は、同社の指名停止期間を、今年12月30日にまでの半年間延長していることについて、「談合そのものを争う裁判ではなく、県でさらに対応できることはない」と述べた。
 小沢チルドレンを自任する達増拓也知事は、「裁判所が明らかにしてくれる」「(入札に)問題はなかったと聞いている」と話すだけだった。》

 

西松建設裏金:社説 西松前社長初公判 「天の声」小沢氏説明を
http://mainichi.jp/select/jiken/nishimatuuragane/news/20090620org00m070004000c.html
《岩手・秋田県での公共工事で行われていた談合で小沢事務所の「天の声」を得るために西松建設は多額の献金を行っていた、と検察側は前社長の国沢幹雄被告(70)の初公判で指摘した。なぜ高額の献金をもらい続けたのかという疑問に対し、小沢一郎・前民主党代表は「なんらやましい点はない」と主張してきたが、検察側は小沢事務所が同社に献金の増額を示唆し、また、小沢事務所の「天の声」で同社の共同企業体(JV)が受注した両県の公共工事は122億円に上ると指摘した。小沢前代表から明確な説明を聞きたい。
 検察側によれば、小沢事務所との関係が良くなかった西松建設は両県での公共工事を思うように受注できなかったため、95年ごろ年間300万円程度だった献金を1000万円以上に増額した。95年に政治資金規正法が強化され、同社は社名を出さずに献金するためダミー団体を作り、97年以降は小沢事務所の示唆で献金額を2500万円に増額。どこにいくら振り込むかは小沢氏側から請求書が送られ、また、「多額の献金が社会の耳目を引かないよう、名義をできるだけ分散してほしい」と求められたという。小沢前代表の公設第1秘書の大久保隆規被告(48)は、00年ごろから献金を巡る交渉や「天の声」を出す役割を担い、献金名義や額の割り振り案を記した一覧表を西松側に提示したという。
 検察側の指摘が真実だとすれば、小沢事務所が深く関与した悪質な行為と言わざるを得ない。民主党の第三者委員会は「罰則を適用すべき重大性・悪質性が認められるかなど多くの点に疑念がある」と批判したが、そうした批判自体が軽率だったのではないかと思えてくる。
 一方、大久保被告の弁護側は「検察官の主張は、ゼネコン関係者の一方的な供述に基づくものに過ぎない。具体的に裏付ける証拠は何一つ出されていない」と批判する。総選挙を控えた時期に野党第1党党首を辞任に追い込んだ捜査を疑問視する声は根強い。検察側が批判をはね返すには、大久保被告の公判でさらに事件の全体像や悪質さを具体的に立証する必要があるだろう。
 ともあれ、特定の政治家への多額の企業献金には必ず理由があることを検察側は改めて示した。西松建設二階俊博経済産業相など自民党議員の関係団体にも献金を行っていた。二階派政治団体が同社のダミー団体名義で計838万円のパーティー券代を受領していた問題では、検察審査会二階派団体の会計責任者らを「不起訴不当」としている。多額の献金にどのような理由があったのか、捜査で徹底解明すべきだと改めて指摘しておきたい。》